★ 第1部隊:<絶望の海>強行突破隊 ★
イラスト/キャラクター:神馬なは


<ノベル>

 神裂空瀬(かむさき うつせ)は、初めて目にする『空と海の世界』に薄ら寒さを覚えた。ぎゅっと刀の柄を握りしめたのは、さざ波のように押し寄せる不安を握りつぶすためだ。
 日常性の欠落した、見慣れぬ風景に圧倒されたのは、彼女だけではない。『穴』の底に来たことのないメンバーは、多少なりとも、理由のない苛立ちや意味のない焦燥など、マイナスの感情を覚えていた。
 踏みしめる大地が無いというだけで、これほどまでに不安をかきたてられるとは、思いも寄らなかった。
 ともすれば、澱(おり)のように胸の奥に沈殿していきそうになる微細な負の感情を吹き飛ばしたのは、鴣取 虹(ことり こう)の元気な一声だった。
「よーし、帰ったら焼き肉食いに行くぞー! もっちろん社長のおごりで!」
 軍用ジープの助手席で真面目な顔をして握り拳を固めている虹に、一瞬、場がしんと静まりかえる。
 と、誰かが思わず吹き出した。
 それをきっかけに、笑いの輪が部隊全体に広がっていく。
「あれ? あれ? 俺なんか変なこと言ったッスか?」
 顔を真っ赤にして慌てふためく虹の様子に、再び笑いが巻き起こった。
「虹殿に、指揮官としての役目を奪われてしまったな」
 空瀬は苦笑しつつも、その視線を前方へと向けた。遠く海面の彼方にけぶる黒い靄を確認する。
 探索隊の報告では、その靄の立ち上る場所に、レヴィアタン――絶望の主が巨体を忍ばせているという。
 ムービースターの臭いでもかぎつけたのか、上空にはすでに無数の深海魚型ディスペアーが蠢きはじめていた。
 そして、後方をふり返る。
 もはや誰の表情にも暗い影は無い。先ほど誰もが思ったのだ。この笑顔を守りたい、と。
「我ら第1部隊の目的は、雑兵どもを蹴散らし、第2部隊を無事にかの大妖のもとへ送り届けることにある! 万一我らが倒るることあらば、銀幕市に住まうすべての民たちの身が危機にさらされると、いま一度心得よ!」
 空瀬が妖刀『風喰い』を抜き放つ。切っ先は、向かうべき敵地を指し示す。
「恐れるな! 我らが胸には希望がある! 全軍突撃!!」
 刀身が空を斬った。
 レヴィアタン討伐作戦の火蓋は、文字どおり斬って落とされたのだった。



 第1部隊は、全体を三つの班に分けて行動する手はずになっていた。
 作戦開始と同時にディスペアーの群れに突撃し、囮となりつつ敵を撃破するA班。
 第2部隊を護衛しつつ、A班が討ち漏らしたディスペアーを倒しながら『道』を造るB班。
 最も近い位置で第2部隊を守りながら、B班が不測の事態に陥った際にはその任務を引き継ぐC班。
 それぞれの班に均等に兵力を割り振ることによって、柔軟な対応ができるようにも設定されていた。
 まずはA班のメンバーが決戦の地へと躍り出た。
「GUUUUUUUUUOOOOOOOOOOOO!!」
 雄叫びをあげて先陣を切ったのは、RDだ。もともと彼は本能の赴くままに行動する喰人鬼だ。ここまでしっかりと命令に従ってきたことこそ、平素では考えられないことだったろう。
 上空を旋回していた一匹の巨大なディスペアーがRDを発見し、急降下してきた。本来ならRDの咆吼は衝撃波を発生させるのだが、力を制限されている今、咆吼はただの大声でしかなかったようだ。
 弾丸のごとく突進してきた生物を、両手でしっかり受け止める。若干押されつつも、
「GAAAAAAAAAAA!!」
 その怪力で放り投げた。
 つづいて、RDの後方から二つの影が飛び出した。
 左側から駆け出したのは、青銅の狼ラストだ。
 RDを横合いから急襲しようとしたディスペアーの、エラのあたりに牙を突き立てる。ゴキッと鈍い音がして、魚類に似た体がボロボロに風化した。
 そのまま跳び上がり、前脚で、次の獲物の眼球を引き裂き、後ろ脚で、また別の獲物を蹴り飛ばした。不気味な鳴き声を残して、二体のディスペアーが海面に墜落していった。
 映画の中と変わらぬ想い―人間を護る―を秘めて、ひたすらに獲物を狩っていく。
 右側から駆け出したのは、水妖キスイだ。
「ご機嫌よう、絶望の申し子たち。出会って早々申し訳ないのですが――」
 すっと帽子を取って挨拶を済ませると
「――消えてください」
 両手を広げて水の魔法を使用する。彼の前方に、無数の氷刃(ひょうじん)が飛び散った。
 何体ものディスペアーが直撃を受けて消え去っていく。ところが、キスイの表情は浮かない。通常の2〜3割程度しか威力を発揮しなかったからだ。
「それでは」
 どこからどう調達したものか、キスイの手に手榴弾が現れる。撒き散らした凶器が、無音の世界に爆音を轟かせた。
 A班に所属している全員が徒歩で海上を走り抜ける。戦闘が主であるA班は、戦闘行動が制限される乗り物には搭乗しないことになっていた。
「あたしたちの役目は囮だ。ディスペアーどもを他の仲間からもっと引き離そう」
 そう言って、須哉 逢柝(まつや あいき)が皆を誘導した。
 ムービーファンであるにもかかわらず、彼女は空手の技を使い、素手で怪魚の群れと渡り合っていた。しかし、人間の、しかも女性の腕力では、一撃で敵を葬り去ることはできない。正拳突きを受け、いったん怯んだはずのディスペアーが、猛然と牙をむく。
 そのとき、彼女の肩からジャンプしたのはバッキーの神夜だった。健気にも、主人を救おうと、ディスペアーの顔に張り付き、目隠しをしている。
「神夜!」
 所詮はバッキーの腕力だ。たかが知れている。振り払われて宙を舞うバッキーを、ジム・オーランドが見事キャッチした。
「おっと、アブねぇところだったな……っと!」
 バッキーをつかんだ方とは逆の腕を、大きく開いたディスペアーの口中に突っ込む。力が制限されているとはいえ、戦闘タイプのサイボーグである彼の腕は、やすやすと化け物を引き裂いた。
 ジムはファンやエキストラのガードを心に決めていたのだ。
 気がつくと彼らは、大小様々なディスペアーたちに取り囲まれていた。それぞれが複数の敵を滅ぼしたにもかかわらず、相手の数は減っているようには思えない。むしろ増えているようにさえ見える。
「この状況って、ボクたちピンチだよね」
 柏木 ミイラ(かしわぎ みいら)がどこか楽しそうに言った。それに応えるように、右手の改造扇風機がブーンと唸りを上げる。
「ピンチィ? 違うネ。作戦成功サッ!」
 クレイジー・ティーチャーが満足げに大笑した。
 見れば、自分たちに追いすがるあまり、空飛ぶ絶望の使者たちのほとんどがこの場に集まっていた。つまり、今やB・C班や第2部隊の突入を邪魔するものはいないということだ。
「ヒヒヒ。だったらサァー、アトはアレだろ? みーんな、ヤッちゃってイイんだよネッ!」
 クレイジー・ティーチャーの狂喜に応じるように、ジェイク・ダーナーが無言のまま一歩前へ出た。フードの奧の双眸がぎらりと殺気を放つ。
 クレイジー・ティーチャーは右手にチェーンソー、左手に金槌を持っている。対してジェイクは小振りのナイフ一本だ。
「クレイジー・ティーチャーとジェイク・ダーナー! 夢の競演だよ! しびれるぅ!!」
 ミイラが心底嬉しそうに身震いした。
 まずはジェイクが敵の牙に身をさらした。押し寄せる絶望を、さらなる絶望をもって迎え討つ。
 ナイフ自身が意志を持つように、縦横無尽にひた走り、たったの一撃ですべての命を奪っていった。
 クレイジー・ティーチャーも負けじと、チェーンソーを振り回し、金槌を放り投げる。
 そこに中型のディスペアーが特攻してきた。鋭い顎が、彼の肩口の肉をごっそり削ぎ取った。
「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」
 絶叫。
「HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!!!」
 そして、爆笑。
 それから彼は、いまだ待機中の後続部隊の方を振り返るとこう叫んだ。
「Gooooooooooooooooo!!!」



 二階堂 美樹(にかいどう みき)は軍用ジープの助手席で想像をふくらませていた。
 B・C班の双方合わせて、計8台の車両と4台のバイクがそろい踏みだ。しかも、搭乗している者たちは皆、スチルショットやディレクターズカッター、そのほかの重火器で武装している。アクション映画好きの彼女にとって、この状況は妄想ネタ以外のなにものでもない。
 彼女の脳内では「核戦争後の荒廃した世界で暴れ回る不良達」の図がすぐさま展開された。
 思わず運転席の桑島 平(くわしま たいら)の胸ポケットに手を突っ込む。
「ちょ、おまえ、突然なにすんだ?!」
 慌てふためく桑島に、にやりと不敵な笑みを向ける。美樹の手には桑島の警察手帳があった。
「こんなの持ってちゃ、思いっきり殺れないでしょ?」
 自分の分も含めて、二人分の手帳を放り捨てる。完全に妄想暴走モードだ。
 桑島は疲れた様子でため息をつき、こめかみを押さえた。
 そこに、クレイジー・ティーチャーの絶叫が届いた。
 桑島の表情が一気に引き締まる。美樹もまた、はっと我に返った。
「おら! 気合い入れて行くぞ! 振り飛ばされんなー!」
 桑島がジープのアクセルを一気に踏み込んだ。彼は探索隊の一員として、一度レヴィアタンを発見しているため、先頭での道案内役を買って出たのだ。
 桑島のジープにつづいて、B班車両が次々と海面に滑り出す。多少のタイムラグを置いて、C班車両も出発した。
 ここで、第2部隊はさらに間隔を開けて進軍する。第1部隊と第2部隊が入り交じることによって生じる混乱を避けるための処置であったが、このことが大きな間違いだったことを、第1部隊のメンバーはのちに知ることになる。
 A班がディスペアーを引きつけてくれたお陰で、後続部隊はしばらくは何の障害もなく進撃することができた。
 黒い靄の立ち上る場所、つまりは目指すレヴィアタンの巣まで全体の道のりのあと半分ほどまで来たとき、あらたなディスペアーが海中から湧いて出た。
 まずはB・C班それぞれのスチルショット部隊が敵影に狙いを定める。ファングッズであるスチルショットで足止めをし、戦闘能力のあるスターやファンがとどめを刺す段取りだ。ファングッズのチャージ時間も考慮に入れた戦法だった。
 冬野 真白(ふゆの ましろ)は事前に射撃訓練に参加し、そこそこの腕前を見せていた。しかし、やはり訓練と実戦とは違う。相手は的(まと)ではなく、生き物だ。恐れもためらいもあるし、ジープの揺れも手伝ってなかなか照準が定まらない。
「女子高生だってやる時はやるんだから」
 自らを鼓舞するようにつぶやいたとき、わずかに震えるその腕を、力強くつかむ手の平があった。ムジカ・サクラだ。
 彼は、戸惑う真白などおかまいなしに強引に照準を合わせる。
「撃て!」
 反射的に真白は引き金をひいていた。ディスペアーたちの動きが止まる。
「命の駆け引きに戸惑いや躊躇は許されねぇ。慣れてねぇからって、そんな理由も通用しねぇ。生きるために足掻く、それが普通のことだ」
 ムジカは使い慣れたリボルバーで、停止した怪物を撃ち殺しながら、謳うように言った。
 シルヴァーノ・レグレンツィは、ティモネを後ろに乗せ、縦横無尽にバイクを走らせていた。仲間の放つスチルショットの弾光に当たらないよう気をつけつつ、動けなくなったディスペアーをサバイバルナイフで倒していく。
「これは、キリがありませんわね」
 ティモネがぼやくのも当然だ。絶望の深海魚は、倒しても倒してもすぐさま次が出現するのだ。遠く後方を見やれば、A班もいまだに戦闘を続行している。考えてみれば、B班、C班ともに極端に歩みが遅くなっていた。
「これじゃ、役目が果たせない」
 シルヴァーノも焦燥をにじませる。
「だけど、このままじゃ――」
 大鎌代わりのナギナタで、また一体、敵をまっぷたつにしたとき、一際巨大なディスペアーがシルヴァーノのバイク目がけて突っ込んできた。
 体当たりを受ける直前に、ティモネもシルヴァーノもバイクから飛び降りる。バイクはただの鉄塊となり、海面を転がる。
 尻餅をついてナギナタを取り落としたティモネと、受け身を取ってするりと立ち上がったシルヴァーノに、再びディスペアーが突っ込んできた。
 鈍い音をたてて吹き飛んだのは、しかし、ティモネやシルヴァーノではなく、ディスペアーの方だった。
「大丈夫ですか?」
 吾妻 宗主(あがつま そうしゅ)が、涼やかな笑みで声をかける。
 彼が、強度補強やターボカスタマイズを施した私用車ではねとばしたのだ。その辿ってきた道筋には、ひき殺され風化しかけた無惨な死骸が無数に転がっていた。
 車窓から勢いよくジャンプして出たのは、同乗していた南雲 新(なぐも あらた)だ。
 まだ起きあがろうとしている巨大ディスペアーに、ディレクターズカッターを突き刺す。それでも動きつづける巨体を「しつこいなぁ」と刀剣『威虎』で斬り裂いた。本来『威虎』と対になっている刀剣『臥龍』は友人に貸してある。
 ふと友人のことを思い出していた新の頭上で、弾薬が炸裂した。ボトボトと粉々になったディスペアーの肉片が、新に襲いかかる。
「うわっ!」
 急いでその場を離れると、もう一人の同乗者、神凪 華(かんなぎ はな)が簡易ロケット砲をかまえており、
「油断大敵だ」
 と不敵に笑った。
「作戦を次の段階へ移行すべきだね」
 宗主の提案に、他の全員がうなずく。
「さぁ、俺たちB班はここで敵を足止めするんだ」
 宗主の車に、バイクを失ったティモネやシルヴァーノも乗り込む。計5人を乗せても、いっさいスピードを落とすことなく、彼の車は次なる獲物を求めて走り出した。
 レヴィアタンへの『道』は、C班に託される。



 すべてを託されたC班は、目的地であるレヴィアタンの巣穴まで、あと一歩と迫っていた。後方には、無傷の第2部隊が控えている。行く手を塞ぐ絶望の群れも、だいぶ数が少ない。突破は容易と思われた。
「おらおら、気合入れていけよー!」
 C班先頭でハンドルを握る赤城 竜(あかぎ りゅう)が同乗者たちに檄を飛ばす。
 それを受けて、後部座席のサキが立ち上がった。彼女は、戦場にはおよそ似つかわしくない物を携えていた。それは、ヴァイオリンだ。
 サキの奏でるメロディーには魔力が宿っている。もちろんスターの能力は弱まっている。それでも彼女は、燃えるような情熱と確固たる意志を持って、協奏曲を弾きはじめた。
「イイ曲だぜ! ハートが燃えてくらぁ!」
 赤城が不器用なウィンクをサキに送った。魔力などに期待せずとも、気持ちだけで十分だった。
 桑島もまた、車両を赤城のジープに併走させながら、心が沸き立つのを感じた。本来ならB班である彼だが、道案内こそが任務であったので、B班の指揮を宗主に任せてきたのだ。
「桑島のおじさんの事は、あたしが守るから」
 後部座席でハコ乗りをかましている新倉 アオイ(にいくら あおい)が、スチルショットを手に、目をすがめる。
 薄野 鎮(すすきの まもる)もまた片手でハンドルを握り、もう片方の手でろくに狙いもつけずにスチルショットを放った。それでも、数体のディスペアーが巻き込まれて、動きを停止させる。
「よし、あとは――うわっ!」
 鎮は自身のジープが宙に浮くのを感じた。浮遊感と衝撃が一瞬で切り替わる。
 気が付けば、彼の車両は横倒しになっていた。ちょうどジープの真下の海面からディスペアーが現れ、それに突き倒されたのだ。なんという運の悪いタイミングだ。
 小日向 悟(こひなた さとり)は、また別のジープからその様子を見て、顔を青ざめさせた。
 彼は、パソコンと無線を駆使して、情報を整理し戦況を分析して、全班に指示を出す、いわゆる司令塔の役割を果たしていた。そういった意味で、唯一全体を気にかけている人物だった。
 ディスペアーは上空、海中、この『空と海の世界』の至る所から出現する。いまA班、そしてB班がそれらを引きつけている。しかし、もし先ほど鎮のジープの真下から敵が出現したように、第2部隊の真下、もしくはすぐ近くにディスペアーどもが突如現れ、さらに引きつけるべき第1部隊が手一杯の状況になっていたら……
 第1部隊と第2部隊をわざわざ離れさせて行軍していたことが裏目に出てしまう。
 悟の背中に叫び声が突き刺さった。A班のものでも、B班のものでもない。まさしく第2部隊からの声だ。
 見れば、第2部隊の一部が、若干の数ではあるが、ディスペアーによって襲われているところだった。
「作戦ミスだ」
 悟は悔しさに唇を噛んだ。
「そないに自分を責めたらアカンで。ここまできたら、自分らは道を切り開くことだけを考えた方がエエ」
 棺桶をかついだサンク・セーズが後部座席から身を乗り出しながら、言う。
 立ち止まっている暇はない。第2部隊の被害が軽微であることを信じつつ、前に進むしかないのだ。もはや第1部隊はC班しか残っていないのだから。
「ほな、いきましょか! ガルちゃん!」
 サンクは、棺桶からあり得ないほど巨大なカラクリを取り出し、身動きできないディスペアーを殴り倒していく。能力が制限されていても、動けない敵を倒すくらい造作もないことだ。
 ジャック=オー・ロビンは、桑島の運転するジープの屋根に立ち、自らが作りだしたナイフでディスペアーを斬り裂いていた。
 先頭を行くということは、それだけ敵にぶつかる回数が多いということだ。身にまとったコートはすでにボロボロになり、彼自身も傷ついている。
 だが、それは誰もが同じことだった。A班もB班も、第1部隊の全員が、終わりなき戦いに挑んでいるのだ。
 この戦いを終わらせる方法は、ひとつしかない。
「桑島さん、一気に突っ切ろう!」
「おう!」
 彼らの眼前には絶望で造られた壁があった。蠢くものもいれば、縛られたものもいる。数は無限に感じられる。その向こうに行くことこそが、彼らにとっての終わりであり、唯一の成功だった。
 ファンがファングッズで、スターが制限された能力で、エキストラが持てる力のすべてで、その強固な壁を撃破していく。
 そして――
 今、肩で息をするジャックのすぐ足元に、巨大な穴が広がっていた。その奥底では邪悪な塊が、不気味に蠕動している。
 レヴィアタン――銀幕市民に敵対するもの。
 振り返れば、若干の被害を受けはしたものの、ほぼ無傷の第2部隊が、さっそくレヴィアタンをおびき出す準備をはじめていた。
 第1部隊の役目は終わったのだ。
「みんなに知らせましょう」
 アオイが、あらかじめ打ち合わせてあったように、照明弾を空に向けて撃ちはなった。
 高々と、暗い空へと昇っていく小さな光は、ゆるやかな弧を描いて漆黒に溶けていった。A班もB班も、これを合図に撤退を開始するだろう。
 アオイは消えていく照明弾の光を見つめながら、それとは逆に明々と輝き出した胸中の光を感じていた。
 光――それは、希望という名を持っていた。

(担当ライター/西向く侍)






<作戦結果>

達成点:70点
役割分担などは適切かつ効率的なものでした。先行する第1部隊に第2部隊が追随するという陣形は、後方からの襲撃を考慮しておらず、また、上空や海中からの攻撃への対策も十分ではなかった点が惜しまれます。(司令本部)






<登場人物>

鴣取 虹  RD  ラスト  キスイ  須哉 逢柝  ジム・オーランド  柏木 ミイラ  クレイジー・ティーチャー  ジェイク・ダーナー  二階堂 美樹  桑島 平  冬野 真白  ムジカ・サクラ  シルヴァーノ・レグレンツィ  ティモネ  吾妻 宗主  南雲 新  神凪 華  赤城 竜  サキ  新倉 アオイ  薄野 鎮  小日向 悟  サンク・セーズ  ジャック=オー・ロビン  (登場順)
※この部隊への参加者は45PCでした。





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