<オープニング>
鋼鉄の半円だと思えば、それは鱗。
びっしりと、鱗。
四方八方に飛び出したヒレ。
ビルひとつを容易く、がぶりとひとくち。そんな大口。
鼻の穴かと思いきや、それは落ちくぼんだ目だった。
やけに細く長い尾は、ロープのように空を裂く。
海面を突き破り、杵間山ほどもあるものが、ざおおおおおおおおん、と空中に躍り出る。
★ ★ ★
その怪物は「レヴィアタン」と名付けられた。
すべての獣たちの上に君臨する王――それは誰の支配を受けることもなく、あらゆる存在を見下すとされる。
ネガティヴゾーン探索隊の1部隊が持ち帰った映像が、繰り返し、再生される。
他の探索隊の情報をもとに、あの「空と海の世界」の地図が、対策課とアズマ研究所によって作成された。
一見、何の目印もない水平線しかない世界だが、その底に沈む銀幕市と照応させることで、全体像を把握することができたのだ。
レヴィアタンは、地上の、つまり本物の銀幕市における『穴』の位置に、その巣を定めているようだった。それは奇妙な入れ子構造である。
ともあれ、敵の首魁の所在はこれではっきりした。
探索部隊を支援する市民たちが保守した結果、扉はいまだ閉じてはいない。
つまり、レヴィアタンへ至る道が拓かれたのである。
だがそれは逆を言えば、かれらの、現実への侵略の糸口となるものかもしれなかった。
★ ★ ★
マルパスは、絶望の海にひそむ巨大な怪物の姿を見据える。
「あれは殲滅すべきだと思う。だがネガティヴゾーン内で戦うことは得策ではない」
敵の力は強大で、探索部隊の持ち帰ったさまざまな報告を聞くまでもなく、ネガティヴゾーンはアウェイに過ぎる。
「ならば方法はひとつしかない。……この銀幕市において、あれと戦い、打ち破るしかないのだ」
マルパスは言い放った。
それはあまりにも危険な賭けだ。
だがそれに賭けよと、時が告げていることを、誰もがはっきりと感じ取っていた。
<ご案内>
『穴』の向こう側に広がる「空と海の世界」。それは、マイナスの魔法エネルギー=ネガティヴによって形成された疑似空間でした。この「ネガティヴゾーン」へ向けて、市民による大規模な探索活動が行われました。
そこで市民が見たものは、ネガティヴゾーンに棲息する、ネガティヴの結晶体・ディスペアー。さらには、超巨大なディスペアー「レヴィアタン」の存在があきらかになったのです。
→関連ノベル『【ネガティヴゾーン探索】小さきものたち』
→関連イベント『ネガティヴゾーン探索』
→参考資料:ネガティヴパワーの脅威
「レヴィアタン」を放置して、銀幕市に平穏があるとは思えません。この強敵に対して、マルパスが指揮する討伐作戦が行われることになりました。詳しくは、下記、作戦概要をご確認下さい。
<作戦結果>
★銀幕市定点観測カメラの映像(当日の様子が一部、記録されているようです)
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