イラスト/背景:久保川 キャラクター:松田硯

オープニング

「館長。お話があります」
 レディ・カリスが直々にアリッサの執務室を訪れたのは、ヴォロスでの烙聖節が無事に終わった頃のことだった。
「そろそろ、『世界樹旅団』に対して明確な方針を打ち出すべきではないでしょうか」
「うーん」
 アリッサは考えこむ。
 当面、ターミナルで暮らすことになったハンス青年は、おそらく無害な普通人である。一方、世界群ではいまだに、旅団のツーリストが引き起こす事件の報告が入ってきているのだ。
「そうよね。ちょっと考えさせてくれない?」
 アリッサは言った。
 レディ・カリスは、アリッサが旅団に対して積極的な攻勢に出るなどとは期待していなかった。そもそもできることはと言えば、せいぜいが各世界群での警備に力を入れるくらいだろう。それでもまったく手をこまねいているよりはましだ。
 だが、カリスは忘れていたのだ。
 アリッサの思考がときとして、そんな常識的な判断をはるかに凌駕することを。

 数日後、世界司書たちは図書館ホールに集められていた。なんでも館長アリッサからなにかお達しがあるというのである。すでに、レディ・カリスがアリッサに面談したことは噂になっている。場合によっては、世界樹旅団への正式な宣戦布告があるかもしれないという予測もあって、緊張する司書もいた。
「みんな、こんにちはー。いつもお仕事ご苦労様です」
 やがて、壇上にあらわれたアリッサが口を開いた。
「今日集まってもらったのは、今度行う行事についてです。ロストナンバーのみんなが参加できる『運動会』をやりたいと思います!!」
 運動会……だと……?
 予期せぬ発表に司書たちは顔を見合わせた。
「会場は、壱番世界、ヴォロス、ブルーインブルー、インヤンガイ、モフトピア。5つの世界をロストレイルで移動しながらいろんな競技をやるの!」
「楽しそう!」
 最初に反応したのあはエミリエだった。
「でも運動会ってことは、チーム対抗? 組み分けはどうするの?」
「図書館チームと旅団チームの対抗戦です!」
「あ、そうなんだ。旅団チームと対戦かぁ…………。え……?」
「館長」
 リベルがおずおずと挙手する。
「念のため、確認しますが、旅団とは世界樹旅団のことでしょうか」
「そうだよ。ほら、これ」
 アリッサが手にしてみせたのは、ウッドパッドと呼ばれるかれらが通信手段として用いている機器だった。
「どうにかつながりそうだったから、これでメールを送ってみたの」
 見れば、ウッドパッドからケーブルが伸びていて、宇治喜撰241673に接続されており、茶缶に似た世界司書からは白い煙が上がっていた。
「ちょっと待て! 返事は来たのか!?」
「ううん。でも時間と場所は伝えてあるから」
「旅団に開催地と時刻を知られている状態で運動会をするのですか? もし、敵が攻撃してきたら!?」
「応戦するよ。当然じゃない」
「で、でも運動会は旅団とやるって」
「参加してくれるならやるよ。攻撃してきた人もお誘いしてみて」
「ま、待ってくれ、よく理解が……」
「要するに、同じ日時・同じ場所で、戦争と運動会の両方をやるの!」
 ざわざわざわ。
 図書館ホールはどよめきに包まれている。
「……カリス様?」
「……わたくしはしばらく休養します」
 ウィリアムは、そっと話しかけたが、レディ・カリスはかぼそい声でそう言っただけだった。

  *

 一方、その頃、ディラックの空のいずこかにある、世界樹旅団の拠点では、ウッドパッドのネットワークに送られてきた謎のメッセージが話題になっていた。
「これは一体?」
「罠にしても、あんまりだしな……」
「とりあえず、偵察に行ってみたらどうだ?」
「この日時に、この場所に連中がいるのが確実なら、一掃してしまえば、あとあと活動がやりやすくなるしな」
「よし、いくか!」
 そんな様子を横目に、ドクタークランチは我関せずと言った顔だ。
「……よろしいのでしょうか」
「くだらん。悪い冗談だ。行きたいやつは行かせておくがいい」

  *

「この運動会にはふたつの意味があるの」
 アリッサは、続けた。
「ひとつは、文字通り、運動会にお誘いしてみて、旅団の人たちの中で、私たちと交流してもいいという人を見つけるということ。もうひとつは、どの世界にでも私たちはいつでも大軍を送り込むことができるということを知ってもらう、一種の示威行為ね。だから、みんなには、思いっきり派手に暴れてきてほしいの」

ご案内

館長アリッサが『世界樹旅団』に対して打ち出した対応策は、「ロストナンバーの運動会へのお誘い」でした。もちろん黙って参加してくれる旅団ではありません。5つの世界で、敵の攻撃を受けながらの運動会を開催するはめになってしまうのでした……。

このイベントはイベントシナリオ群やイベント掲示板などの形式で行われました。

関連シナリオ

競技の一部、および世界樹旅団の攻撃からの防衛はパーティシナリオとして行われました。

会場シナリオタイトル担当ライター
壱番世界【世界横断運動会】エクストリーム川下り高幡信(wasw7476)
ヴォロス【世界横断運動会】秘都ロワンタンにおける、頭の痛い借り物競走黒洲カラ(wnip7890)
ブルーインブルー【世界横断運動会】大海原の"船"倒し近江(wrbx5113)
モフトピア【世界横断運動会】ロストレイルでGO!鴇家楽士(wyvc2268)
インヤンガイ【世界横断運動会】障害仏北野東眞(wdpb9025)

その他の競技

その他にも以下のような競技が、イベント掲示板などを用いて行われました。

■壱番世界:北極点で紅白玉入れ(中止)

宇宙ステーションの軌道から、ヴィクトリア湖を目指して行われる「エクストリーム川下り」の終了後、参加者を回収したロストレイルは一路、北極点を目指し、同地で玉入れを行います。 この競技はイベント掲示板形式で11月26日より行われます。……という予定でしたが「エクストリーム川下り」の結果、急遽、予定を変更することとなってしまいました!


→壱番世界会場跡地


■壱番世界:緊急!ロストレイル防衛綱引き

「エクストリーム川下り」に大勢のロストナンバーが参加した結果、警備が手薄になったロストレイルを世界樹旅団の奇襲部隊が急襲しました。ワームでできた綱でひっぱられようとするロストレイルをひっぱりかえして護り抜きましょう!(※この競技は11/26夜に突発開催されました)


→壱番世界会場へGO!


■インヤンガイ:疑心暗鬼グルメゲーム

インヤンガイの点心で楽しい飲茶の時間です。けれど食べられるのはゲームに勝った一部の人だけ。参加者の心理を読んで食べたいメニューをゲットして下さい。この競技は掲示板で行われました。


→インヤンガイ会場へGO!


■ブルーインブルー:ビーチフラッグに挑め!

ブルーインブルーの無人島の浜辺で、ビーチフラッグ大会を行います。誰よりも早く、砂浜に立てた旗を奪い取ったひとが勝利者です。この競技は掲示板で行われました。


→ブルーインブルー会場へGO!


■モフトピア:レインボウスライダー♪

モフトピアの浮島で、さわれる虹を滑り降り、そのスピードを競います。おもしろがってアニモフも一緒に滑ろうとします。スピードを出しすぎるとコースアウトしますが、ふわふわの雲が受け止めてくれるので大丈夫! この競技はフリーシナリオ形式で行われました。


→モフトピア会場へGO!


■ヴォロス:天空演武会

ヴォロス上空にロストレイルがつくりだした足場のうえで、華麗にして勇壮な演武を行ないます。こちらは競技というよりパフォーマンスです。日頃の鍛錬の成果を演技として披露しましょう。特別ゲストとしてドラグレット族のみなさんが招待され、鑑賞してくれます。この競技は掲示板で行われました。


→ヴォロス会場へGO!


イベント掲示板

最新情報の案内や雑談用の掲示板も運営されました。

→【異世界横断運動会】ロストレイル10号(移動中)

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螺旋特急ロストレイル

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