陽光がじりじりと首筋を灼き、刺す。比喩ではなく、肌が痛い。しかしリュカオス・アルガトロスは怯まない。暴君のような太陽の下、現地流の『正装』に身を包んで大地を踏みしめている。
「それではツアーの趣旨を説明させてもらう」
真っ青な空の下、リュカオスが纏う白はあまりに眩しかった。
「戦闘訓練――ということになっているが、それは単なる名目だ。見物人として楽しむのも良いだろう。無論戦闘をしたい者はそうしてくれて構わん。要は、戦闘にこだわらずに祭りを楽しんで欲しいということだ」
彼らは今、ブルーインブルーのとある海上都市に立っている。年に一度の祭りを控え、目抜き通りは熱気と活気に満ち溢れていた。
真っ赤に潮焼けしたおやじが露店の準備をしている。小麦色の腕をまくって樽を運ぶ女将がいる。半裸で走り回る子らがいる。
しかし何よりも目を引くのは。
褌とサラシだった。
「相手が一般人だからといって侮るな。時化や海魔と戦うブルーインブルーの人々は充分に屈強だ。毎年多少の怪我は付き物らしいが、致命的な重傷は負わせぬよう配慮してほしい。特殊能力やトラベルギアの使用はほどほどにするように。加減を学ぶのも鍛錬のうちということだ」
褌一丁で鼻息荒く筋肉を誇示する船乗りがいる。細い体をサラシに包んだ女傑がいる。リュカオスも褌を身に着けていた。何でもこれが正装であるらしい。褌やサラシに身を包んだ男女が見物人を巻き込みながら肉弾戦を繰り広げ、馬鹿騒ぎをする。それがこの祭りの唯一の目的であり、ルールだ。
「ブルーインブルーに褌って微妙じゃね? 壱番世界の西欧に似た雰囲気の世界ってどっかに書いてなかったか?」
ロストナンバーの一人がそんな疑問を口にするが、誰もが聞こえないふりをした。多分、突っ込んではいけない点だ。
「当事者間の合意がある場合に限り、ロストナンバー同士の対戦も許可する。ただしその場合も諸々の配慮は怠らぬこと。それから、服装規定についてだが」
リュカオスはどこまでも生真面目に言葉を継いだ。
「この正装は強制ではない。褌やサラシを拒否したからといって不利益は一切生じん。各々が好きな衣装を纏ってくれ」
武人の大胸筋をダイヤモンドのような汗が滑り落ちて行く。凛と締め上げられた褌は鍛え上げられた肉体にきりりと食い込み、ある種の完成された美を作り出していた――が、正直ちょっと暑苦しい。
「………………」
ロストナンバー達は頭上に胡乱な目を向けた。素知らぬ顔で照りつける太陽があるばかりだ。
祭りの準備は着々と進んでいる。町の中心にある広場を出発した参加者たちは成人が数人は立ち回れそうな広い通りを下りながら喧嘩を繰り広げ、最終的には砂浜を目指すことになる。
「これより総員自由行動とする。見物人も戦闘に巻き込まれる可能性があるらしいので注意は怠らないように。では――散開!」
汗と褌を光らせ、リュカオスの号令が飛んだ。
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!注意!
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