【０世界大祭】ターミナル鉄人レース

ノベル

■長距離走（ラン）

　鉄人レースもいよいよ大詰め。
　舞台は鬱蒼と木々が生い茂る、０世界の樹海である。

　枝折 流杉は自転車競技のときのお返しとばかりに、タリスににゃぼてんをぶつけることに成功するも、ふと気づくとロアンに惑わされて反対方向に走っている。
　レースも後半となると妨害作戦も巧妙かつ熾烈になってきていた。

「昴ーーー！？」
　天倉 彗は妹とはぐれてしまった。
　彗だけなら上位を狙えたが、ここに至るまで、海で溺れかけたり、街で迷子になったりした南河 昴に気をとられてばかりだ。この後も、ワームに驚き、すっころんだ昴のピンチに、彗が二丁拳銃で駆けつけるのはもう少し後のこと――。

　自転車競技で一位を獲得した臣 燕は、呪符を用いてワームを撃退し、自身も加速させて臨んだが、ワームうごめく樹海のコースは魔境であった。自転車競技の上位陣は、樹海の長距離走では惜しくも後続に譲ってしまうことになった。

　そしてここで一番の躍進を見せたのが虎部 隆だ。
　風の法術でワームを避けながら走る永光 瑞貴を抜いたことで、水泳競技で最下位に落とされたことの雪辱も果たしたというものだろう。

　その前方、破壊音に混じって楽しげな声があがっているのは、モック・Q・エレイヴは巨大ロボになってワームと戦っている場面だ。モックはレースそっちのけで、ワームと戯れるのが楽しいらしい。
　それを横目に、木々の梢から梢へ跳び渡りつつデッドヒートを演じているふたつの影。
「やるね。でもラストまで気を抜かないよ～」
「こういう山猿アタックは得意ですぅ☆」
　アルトゥルーゾと川原撫子である。
　ともに「樹上」を走るという戦略をとった。変身能力を駆使するアストゥルーゾが有利かと思いきや、体力と根性だけで走る撫子のほうが頭一つ抜けているのは凄まじいものがある。

　樹上のルートは直線をとれるのが利点だが、走りやすさではやはり地上のほうが良い。
　坂上健はゴールが「宿木」であることに着目。ターミナルから宿木までが水路で結ばれているのを利用し、水路をたどるようにして効率的に樹海を突破し、順位を上げたのだった。

「素早いワームじゃのう、ゴールはまだか！？」
　ジュリエッタ・凛・アヴェルリーノはトラベルギアを手にワームと交戦中。
　樹海の木陰に雷光が閃くが、埒が明かぬ、と、八岐大蛇の幻影を生みだした。ワームが大蛇に気をとられている隙をついて駆け抜ける。前方の、木々の向こうにゴール地点が――
「っ！」
　と、目の前をふさぐ影と、振動。ずしん、と空からワームが降ってきた。
　二体、いや三体？　小型のワームが次々と墜落してくる。いったい何が！と見上げたジュリエッタの視界の中、金の毛並みの猫獣人――デュベルが空を飛ぶのが見えた。

　邪魔なワームを重力操作で放り投げ、ライバルたちの進路を塞ぐ、一石二鳥の作戦で、デュベルは一気に攻勢に出た。
　水泳競技こそ、苦手な泳ぎで遅れをとったものの、市街地の自転車競技ではぐんと順位をあげたデュベル。ここでその差を一息に縮めた。
「もらった！」
　かろやかなストライドで、最後のルートを疾走。
　ふさふさした毛並みが、ゴールテープを切れば、宿木で待っていた観客からの声援が彼を包み込んだ。

　こうして、０世界大祭・ターミナル鉄人レースは、デュベルが優勝者ということになったのだった。

長距離走競技終了後の順位

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