【０世界大祭】ターミナル鉄人レース

ノベル

■水泳（スイム）

　スタートの合図とともに、百余名の参加者たちが海へと向かってゆく。
　レディ・カリスのプライヴェートビーチであるこのチェンバーは、壱番世界の地中海を模しているらしいが、今日は喧騒の巷と化していた。

　ビキニ姿も眩しいコンスタンツァ・キルシェの、しなやかな肢体は人魚のように波間を泳ぐ。
　一方、鷹遠 律志は古風な白褌。ふたりは泳ぎが得意と見え、早々のスタートダッシュで群れからいち早く抜け出す。

　だがしかし、海にはどういうわけか先端にドリルが唸るサメ型ロボットが参加者たちを待ち受けているのだ。
　シドいわく「ちょっとした手違い」らしいが……
「ちょっとした手違いでサメが出るかぁーッ！」
　ツッコミつつも果敢に突き進んでいくのは虎部 隆。だが。
「っ！？」
　突如、見えない壁に阻まれ、したたかに顔を打った。
「悪い」
　相沢 優の防護壁のようだ。勝負の世界は非情、とばかりに隆を振り切る優。
「っのぉー！」
　追いかけようとした隆だったが、ひときわ高い波に襲われ、あっという間に最下位まで流されてしまった。
　波を引き起こしたのが永光 瑞貴の法術であったと気づいたかどうか。

「博士の発明は、今日も面白いのです」
　シーアルシーゼロは巨大化してざぶざぶと海の中を行く。サメロボに突撃されているがあまりこえたていないようだ。
　ルンは、向かってくるロボをたくみにかわすと、神業的な反射神経で相手の下腹を蹴り上げる。高らかに蹴り上げられ、花火のように上空で爆発するロボ。

　そうして一部のロストナンバーたちがサメロボと戦いながら泳ぐ隙に、ティリクティアは予知によって争いに巻き込まれるのを避けながら泳ぎ去ってゆく。
　アストゥルーゾはカジキに変身して、そのスピードはかなりのものだ。……が、心なしか重くなったような気がしたのは気のせい――ではなく、ヴァージニア・劉の鋼糸が尾に巻きついているせいだった。劉はアストゥルーゾにひっぱってもらう形で労せず順位を上げていた。

「はいよー、レギオーン！」
　レイド・グローリーベル・エルスノールがかれらをも抜く。
　レイドは召還したレギオンに乗って飛ぶがごとくの勢いだ。
　だがそんなレイドよりも速かったのが、しだりである。
　水を司る水神であればそれも道理か。さして奮起しているようでもなく、文字通り流れるようにすいすいと、誰よりも早くゴールへ戻ってくるのだった。

→自転車競技につづく

水泳競技終了後の順位

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