【０世界大祭】ターミナル鉄人レース

ノベル

■自転車（バイク）

「にゃぼ！　にゃぼにゃぼー！」
　タリスが枝折 流杉へ向けて「にゃぼてん」をけしかけるも、あざやかにかわされてしまった。妨害作戦、失敗。
　流杉はマイペースに、まずはゴールを探すべく、描いた鴉を空へと放つのだった。
「……いい加減なレースだね」
　なにせゴールが決まっていないというのだから、そんな感想をもったのは流杉だけではない。

「どなたかゴールの場所知りませんかー？」
　冷泉 律は沿道の見物人に聞いて回ったが、なかなか知っているものにいきあたらない。
　おかげで大きく時間をロスをしてしまった。
　彼の自転車のカゴの中で、ハルシュタットはうとうとしながら付き合っていたが、律の順位がかなりの下位になりそうだと悟ると、するりと抜け出して一人でどこかへ行ってしまったようだ。
　一方、桐島 怜生は作戦としては同じだが、こちらはうまくゴールの情報を掴んだと見え、颯爽と目的地へ向かって自転車を走らせる。

　ヴィンセント・コールはセクタンを、ヴェンニフ 隆樹は影を放って情報収集を試みる。
　エク・シュヴァイスは義眼によるサーチでルートを捜索していた。

　そうしてゴールを探しながら、堅実なルートをとるものたちがいる他方で、ただひたすら、勢いだけで文字通り突っ走るものたちも少なくなかった。
　そして結局、今回はそうした勢い組が大きく順位を伸ばす結果になったのだ。

「ターミナルの空はチャンのものある！」
　建物の屋根のうえを走行し、ジャンプを繰り返す、チャンのアクロバットな走りは歓声を呼び、ノリン総督は能力で壁をすりぬけてまっすぐ走るという反則的な技を見せた。
「ゴールでお肉と先生が待ってる筈！」
　と氏家ミチルも根性を発揮。

　ゴール地点はターミナル市街の下方――樹海への降り口に続くあたりに設置されていた。
　その手前では激しいデッドヒートが繰り広げられる。
　ＰＮＧのスピードはジェット噴射で凄まじい加速だ。自転車競技というか、ほとんど自転車を持って飛行していると言ったほうがいい。
　それに比べればルイス・ヴォルフのほうは正統派。膂力に任せた走行でぐんぐんライバルを抜いてゆく。カーブでは鋭いドリフトを見せ、摩擦でタイヤが焦げて削れる。
　ルイスが追うのは臣 燕。
　妹の臣 雀も良い走りを見せていたが、やがて燕のほうが妹に差をつけてトップに躍り出た。
　そこへルイスが迫る。しかし燕は余裕の走りだ。
　最後のカーブはほとんど並んで走った――が、きゃあ！と黄色い悲鳴があがったかと思えば、燕が沿道の女性のスカートをめくったようだ。
　ルイスが思わず目を奪われた……のが決定的な差を生んだ。
　燕、１着。ルイスが２着。
　そこへＰＮＧが突っ込んできて、ゴール向こうの建物に激突。自転車は粉々になり、建物が大破するなか、自転車競技のベスト３が決定したのであった。

→長距離走競技につづく

自転車競技終了後の順位

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