★ 【小さな神の手】スーパー『まるぎん』倒産回避プロジェクト ★
<オープニング>

 午前10時29分。
 銀幕ふれあい通り角、スーパー『まるぎん』を臨む電信柱の影に、一匹のグレーハウンドが身を潜めていた。
 午前10時30分。
 タイムセール開始の音楽とともに、店内は活気ある戦場と化す。出入り口扉が開閉するたびに漂ってくるのは、定番目玉商品「素材厳選カニクリームコロッケ」の香ばしい匂い――
 10時31分。32分。33分。
 グレーハウンドは、彫像のように動かない。
 精悍なまなざしで、出入り口をひたと見据えたまま、34分、35分。
 戦利品をほくほくと抱えた第一陣が、店から出てくる。
 ひとりひとりに視線を走らせたグレーハウンドは、彼らの中に、赤いマフラーの忍者の姿がないことを確かめてから、静かにその場を離れるのだ。

  ★ ★ ★

「あなたは泣くのよ。泣いて泣いて反省するのよ、オネイロス様にあやまるのよ。ひどいことになった街を見て、苦しまなくちゃならないの」

 ともだちは言った。
 言葉通りに、リオネは泣いたし苦しんだ、と思う。
 それですべてが贖えたわけではないことは、彼女がまだ銀幕市に暮らしていることが何よりの証拠。

「おまえの魔法に踊らされ、傷つき、死んでいる者は山ほどいる。おまえが思っているよりもはるかに多いと思え」

 誰かがそう告げたように、彼女の罪は本当に重いものなのだろう。
 先日の、あの恐ろしく、哀しい出来事も、それゆえに起こってしまったことなのだ。まさしく悪夢のような一件だった。いまだ、市民たちのなかには、深い哀しみと、負った傷の痛みから逃れられないものがいる。

 だがそれでも、季節はうつろう――。

「今度は……ほんとうに、みんなのためになることをしたい。魔法をつかうのじゃなくて、このまちで、泣いているひとが笑ってくれるようなこと。リオネがやらなくちゃいけないこと。……また間違ってるかもしれないけど、今はそうしたいと思うの。ねえ、ミダス、どう思う?」
「神子の御意のままにされるがよろしかろう」
 生ける彫像の答は、思いのほかそっけないものだったが、止めはしなかった。
 ならばやはりそれは、為すべきことなのだと……リオネは考えたのである。
 銀幕市には、彼女がやってきて二度目の春が巡ってこようとしていた。

「リオネに何か、できることない?」
 このところ、その言葉を何度も繰り返している。
 市役所で。カフェで。街なかで。映画館で。
 それは結局、自分が、何ら救済のすべを持たぬ無力な子どもに過ぎないことを再確認することであったとしても。そして、誰かに助力を請うのがリオネの仕事となるにしても。
「でしたら、ほんの少しでいいので、うちのペスを構ってやってくださるとうれしいんですが」
 そしてリオネは、カフェに居合わせた本田流星から、彼の飼い犬の話を聞いた。
 その犬は『あの日』以来、毎日決まった時間にまるぎんの前で、きっかり五分間を過ごしている。
 すっと姿勢を正したグレーハウンドの姿は、誰かを待つようでもあり、黙祷を捧げるようでもあるのだと。
「……ペスちゃん」
「ペスは何も知らない――はずなんです。ぼくも家族も、ペスの前では〈まだらの蜂〉に関することは、話さないようにしていたので。ですが……漆く」
 少し口ごもり、すみません、と、流星は赤く腫れた目元を押さえる。
「……ん、に何が起こったのかは、あのとおり利口な犬なので、ある程度のことは察しているのでしょう。彼とはもう、逢えないことも。そのうえで毎日、決まった時間にあの場所で『待っている』。彼女なりの、儀式なのだと思います」
 
  ★ ★ ★

 10時36分。
 距離を置いて見つめていたリオネは、意を決して近づく。
 グレーハウンド――本田さんちのペス殿は、幼い夢の神のすがたをみとめるなり、低く唸った。
「ぐるるる……(訳:何よリオネ。あたしに何の用?)」
「ペスちゃん。あの……。あのね……。お話してもいい?」
「わんっ、わわん(訳:いやよ。こっちこないで。あんたの顔、見たくないの)」
「まって!」
 走り去ろうとしたペス殿は、尻尾を掴まれ、引き留められる。
「きゅうん! わんわんっ!(訳:イタぁ! 何すんのよ。噛みつかれたいの? ……ああ、あんたを噛むことはできないんだったわね)」
「ペスちゃ……。あの、ごめんね?」
 その謝罪に、尻尾を掴んだこと以外の意味が含まれていることを知ってか知らずか、ペス殿はぷいとそっぽを向く。
「わんっ。わんわんわんっ!(訳:やめてよ。あんたに謝られる筋合なんてないんだから)」
「……でもね、リオネ、ペスちゃんとお話したいの……」
 とりつく島もないペス殿に、リオネがうなだれたとき。
「にゃん。にゃん。にゃー(訳:大変大変たいへんよー)」
 まるぎんから、三匹の子猫『まぁ』『みぃ』『むぅ』が、血相を変えて駆け出してきた。
「にゃー、にゃあお、ふにゃあ(訳:たった今後方で、店長がパートさんたち集めて、緊急極秘ミーティングしてたの。今月末でまるぎん倒産しちゃうのよぉ――あ、ペス殿がリオネちゃんをいじめてる)」
「うにゃん。にゃあ〜(訳:いっぱい泣いて謝りにきた子に、怒っちゃだめよ)」
「んにゃあ〜(訳:そうよぉ。ペス殿ったら男らしくないわね〜)」
 子猫たちはにゃーにゃー言いながら、リオネを庇うように前脚を広げ、横並びになった。
「わん!? わわん、……わんっ?(訳:失礼ね、まぁみぃむぅ。あたし女の子よ! ……それより倒産ってどういうこと?」
「うにゃー。にゃん、にゃー(訳:あたしたちも物陰から聞いただけだから、詳しいことはわかんないんだけどね)」

 ――大変残念ですが、当スーパーはこれ以上、営業を続けることができなくなりました。
 お客様に喜んでいただけるよう、お手頃価格での経営を心がけてきましたけれども、仕入金額の高騰と資金繰りの悪化はいかんともしがたく……。
 今月末、不渡りが出てしまうことは確実です。
 ご愛顧くださった銀幕市のかたがたに感謝をこめて、せめてもうしばらくは、通常どおりのタイムセールを実施したいと思います。
 今まで頑張って働いて下さった皆さんにお礼を申し上げるとともに、どうか閉店の日まで、いつもどおりの笑顔で対応くださ……(まぁ曰く、このあと店長が泣き崩れたため、聞き取れなかったそうな)

「なんとか、しなくちゃ」
 リオネが唇を引き結ぶ。
「まるぎんがなくなったら、こまるひと、たくさんいるもの。ペスちゃんだって」
「わん?(訳:あたしがどうして困るのよ?)」
「……だって、そしたら、タイムセールのカニクリームコロッケもなくなっちゃう。たいせつな思い出の……」
「くぅん……(訳:リオネ、あんた……)」
 グレーハウンドはようやく、敵意を和らげた。
 その賢さ、ソロモン王の如し。そう謳われる聡明な瞳が細まる。
「わんっ。わわん。わんわん(訳:あたしずっと、あんたのことを、自分のしでかしたことを全然自覚してない、甘えたさんのいけ好かない子だと思ってたけど、わりと見どころあるじゃない)」
「……でもリオネ、いつも、あまり役にたたなくて」
「んにゃぁ……(訳:あたしたちも、何か力になりたいけど……)」
「わふん。ぐるるる。わわん、わんわん(訳:そうねえ。リオネはただの子どもだし、まぁみぃむぅなんか、超可愛いってだけだし、いくらあたしが才色兼備で戦闘力バツグンの犬でも、生き馬の目を抜くビジネス社会では何の力もないものねぇ)」
「どうすればいいのかな……」
「わふっ、わんわん(訳:ふっ、いいこと教えてあげる。こういうのは、悪知恵の働きそうな大人に頼むのが一番なのよ)」
 グレーハウンドはリオネの前で身を屈め、くいと首を背に向ける。
「わんっ!(訳:あたしに心当たりがあるわ。乗って! 走るわよ)」
「うん、ありがと、ペスちゃん」
「にゃー! んにゃー(訳:あたしたちも行くー!)」

 リオネと三匹の子猫を乗せ、グレーハウンドは疾走する。
 時速60kmのスピードで向かった先は――銀幕市立中央病院。
 
〈ガラスの箱庭〉の静寂を破り、ペス殿は吼えた。
 
 わんっ!
 わんわんわん!
 わわん、わん!
(訳:ドクターD! ついでに源内! 顔貸しなさい!)

 精神科医は穏やかな笑みでグレーハウンドを迎え、手のひらを差し出した。
「ようこそ、いにしえの王の如き叡智を持つお嬢さん。訪ねてくださって、うれしいです。どうぞ、お手を」
「わん! ………わふっ、わぉん(訳:わん! ………じゃなくてね。ボケてる暇はないのよドクター。実は……)」
 律儀に「お手」をしてから、ペス殿は犬語で懸命に訴える。
 わん。わわん。わん。 
「ペス殿にお手させるなんて、大したもんだな。で、このお嬢さんは何て言ってんだ?」
 苦笑する源内に、ドクターDはペス殿の前脚を握ったまま答える。
「ソロモンの指輪を持たない身には、彼女の言葉を理解することはできないんですけどね」
 精神科医はその笑みを、ペス殿の背から降り立ったリオネに向けた。
「何か協力を訴えるために、ここに来られましたか?」

(あなたは、泣くのよ。泣いて泣いて、反省するのよ)
 耳朶にはまだ、あの子の声が響いている。
 罰を受けているあの子の、長い長い贖罪が終わるまで、この声が止むことはない。
 ――だけど、そう言ったともだちも、リオネと同じ、泣きたかった子どもで。
 もしも力を封印され、地上に堕とされたとしたら、小さな手の無力を嘆いたにちがいないのだ。
 おそらくは、今のリオネのように。

 無自覚であることが、子どもの罪だというのなら。
 罪を認め、この手を懸命に広げることが、つぐないの糸口となるのだろう。
 それはまだ、ささやかなきっかけに過ぎないけれど。

 ドクターDを見上げて、リオネはきっぱりと言う。
「こまってることがあるの。手伝ってください」
 瞳いっぱいに浮かべた涙を、小さな手で、きゅっとぬぐってから。

種別名パーティシナリオ 管理番号524
クリエイター神無月まりばな(wwyt8985)
クリエイターコメント【注意】
このパーティーシナリオは「ボツあり」です。プレイングの内容、また、ご参加の人数によっては、ノベルへの登場がお名前だけ、あるいはわずかな描写となる可能性があります。あらかじめご了承のうえ、ご参加くださいませ。

     …―…―…―…―…―…―…―…―…

こんにちは、イベントに至る病に侵されている神無月まりばなです。
長いOPで申し訳ありません。
そんなわけで【小さな神の手】シナリオは、ドクターDを拉致って豪華にいきたいと思います。
 
今回のミッションは、「経営困難に陥ったまるぎんを救え!」です。
ドクターDがその頭脳をもって、畑違いの経営コンサルティングに挑戦くださるとのこと。
皆様もどうか、得意分野でご協力くださればうれしいです。

【1】コンサルティングチーム(担当:ドクターD)
店長にヒヤリングし、資料を集めて現状分析を行います。そのうえで今後の対策を決め、【2】【3】【4】のチームに指示を出します。ペス殿に「悪賢い大人」認定されそうな、頭脳派のかた向けです。

【2】戦略実行チーム(担当:源内、珊瑚姫、流星)
コンサルティングチームの指示を受け、仕入先の開拓や資金調達、その他もろもろの活動に奔走します。フットワークが軽いかた、体力に自信があるかた、豊かな人脈を持つかたに向いています。

【3】マダムキラーチーム(担当なし)
実は店長の奥さんは、まるぎんの継続に消極的です。ずっと二人三脚で頑張ってきましたが、このところ弱気になってしまい、店を畳んで銀幕市の外で暮らすのもいいかも、などと考えています。奥さんの説得をお願いします。
……マダムキラーを自負するかた向けです。

【4】プレミアムかわいこちゃんチーム(担当:リオネ、ペス殿、まぁみぃむぅ)
まるぎん再建に向けて店長の情熱を鼓舞すべく、美少女の皆さん一丸となって、「や・め・な・い・で」と訴えましょう。「外見」が美少女であれば性別年齢種族不問。自薦他薦を問いません。可愛い動物も効果的です。

【5】いちかばちか個人プレー
どのチームにも属さずに、あっと驚く発想と手段で一発逆転、まるぎん救世主の座を狙います。ものっっっすごくボツ率が高く、プレイングを拝読する記録者だけが楽しいというリスキーさ。Mっ気のあるかた向け。

※NPCとの絡みや交流は、ご希望があれば、あるいは、プレイングを拝見してそれが自然な流れであれば、描写させていただきます(内容によっては反映されない場合もございます)。
 
それでは、まるぎんの後方で、値下げシールの整理とお買い得パックの袋詰めをしながら、お待ちしております。

参加者
リゲイル・ジブリール(crxf2442) ムービーファン 女 15歳 お嬢様
蘆屋 道満(cphm7486) ムービースター 男 43歳 陰陽師
真山 壱(cdye1764) ムービーファン 男 30歳 手品師 兼 怪盗
ルウ(cana7787) ムービースター 男 7歳 貧しい村の子供
ケト(cwzh4777) ムービースター 男 13歳 翼石の民
萩堂 天祢(cdfu9804) ムービーファン 男 37歳 マネージャー
ニーチェ(chtd1263) ムービースター 女 22歳 うさ耳獣人
レモン(catc9428) ムービースター 女 10歳 聖なるうさぎ(自称)
ジュテーム・ローズ(cyyc6802) ムービースター 男 23歳 ギャリック海賊団
神龍 命(czrs6525) ムービーファン 女 17歳 見世物小屋・武術使い
浅間 縁(czdc6711) ムービーファン 女 18歳 高校生
片山 瑠意(cfzb9537) ムービーファン 男 26歳 歌手/俳優
太助(czyt9111) ムービースター 男 10歳 タヌキ少年
流鏑馬 明日(cdyx1046) ムービーファン 女 19歳 刑事
桑島 平(ceea6332) エキストラ 男 46歳 刑事
レオ・ガレジスタ(cbfb6014) ムービースター 男 23歳 機械整備士
狼牙(ceth5272) ムービースター 女 5歳 学生? ペット?
クラスメイトP(ctdm8392) ムービースター 男 19歳 逃げ惑う人々
リャナ(cfpd6376) ムービースター 女 10歳 扉を開く妖精
ブラックウッド(cyef3714) ムービースター 男 50歳 吸血鬼の長老格
王様(cvps2406) ムービースター 男 5歳 皇帝ペンギン
スルト・レイゼン(cxxb2109) ムービースター 男 20歳 呪い子
リカ・ヴォリンスカヤ(cxhs4886) ムービースター 女 26歳 元・殺し屋
長谷川 コジロー(cvbe5936) ムービーファン 男 18歳 高校生
柊木 芳隆(cmzm6012) ムービースター 男 56歳 警察官
ベルヴァルド(czse7128) ムービースター 男 59歳 紳士風の悪魔
レオニード・ミハイロフ(cvxy7249) エキストラ 男 31歳 会社員
小日向 悟(cuxb4756) ムービーファン 男 20歳 大学生
エディ・クラーク(czwx2833) ムービースター 男 23歳 ダンサー
ギリアム・フーパー(cywr8330) ムービーファン 男 36歳 俳優
吾妻 宗主(cvsn1152) ムービーファン 男 28歳 美大生
モミジ(cafd6042) ムービースター 男 13歳 妖狐(神社の居候)
ヴィディス バフィラン(ccnc4541) ムービースター 男 18歳 ギャリック海賊団
綾賀城 洸(crrx2640) ムービーファン 男 16歳 学生
真船 恭一(ccvr4312) ムービーファン 男 42歳 小学校教師
アレグラ(cfep2696) ムービースター 女 6歳 地球侵略軍幹部
槌谷 悟郎(cwyb8654) ムービーファン 男 45歳 カレー屋店主
ルイス・キリング(cdur5792) ムービースター 男 29歳 吸血鬼ハンター
アル(cnye9162) ムービースター 男 15歳 始祖となった吸血鬼
ルア(ccun8214) ムービースター 男 15歳 アルの心の闇
りん はお(cuuz7673) エキストラ 男 35歳 小説家
来栖 香介(cvrz6094) ムービーファン 男 21歳 音楽家
式 純也(caxv4999) エキストラ 男 40歳 ホラー映画の俳優?
ブライム・デューン(cdxe2222) ムービースター 男 25歳 ギャリック海賊団
晦(chzu4569) ムービースター 男 27歳 稲荷神
葛城 詩人(cupu9350) ムービースター 男 24歳 ギタリスト
鹿瀬 蔵人(cemb5472) ムービーファン 男 24歳 師範代+アルバイト
兎田 樹(cphz7902) ムービースター 男 21歳 幹部
続 歌沙音(cwrb6253) エキストラ 女 19歳 フリーター
セエレ(cyty8780) ムービースター 女 23歳 ギャリック海賊団
アゼル(cxnn4496) ムービースター 女 17歳 ギャリック海賊団
ノルン・グラス(cxyv6115) ムービースター 男 43歳 ギャリック海賊団
朝霞 須美(cnaf4048) ムービーファン 女 17歳 学生
ベアトリクス・ルヴェンガルド(cevb4027) ムービースター 女 8歳 女帝
悠里(cxcu5129) エキストラ 女 20歳 家出娘
旋風の清左(cvuc4893) ムービースター 男 35歳 侠客
ハンナ(ceby4412) ムービースター 女 43歳 ギャリック海賊団
赤城 竜(ceuv3870) ムービーファン 男 50歳 スーツアクター
河野 水漣(chmu9039) ムービースター 男 16歳 学生
藤代 陽子(cpcw4713) エキストラ 女 47歳 下宿経営者
津田 俊介(cpsy5191) ムービースター 男 17歳 超能力者で高校生
クロノ(cudx9012) ムービースター その他 5歳 時間の神さま
古森 凛(ccaf4756) ムービースター 男 18歳 諸国を巡る旅の楽師
シュウ・アルガ(cnzs4879) ムービースター 男 17歳 冒険者・ウィザード
カロン(cysf2566) ムービースター その他 0歳 冥府の渡し守
岸 昭仁(cyvr8126) ムービーファン 男 22歳 大学生
本気☆狩る仮面 あーる(cyrd6650) ムービースター 男 15歳 謎の正義のヒーロー
ノリン提督(ccaz7554) ムービースター その他 8歳 ノリの妖精
本気☆狩る仮面 るいーす(cwsm4061) ムービースター 男 29歳 謎の正義のヒーロー
エンリオウ・イーブンシェン(cuma6030) ムービースター 男 28歳 魔法騎士
シキ・トーダ(csfa5150) ムービースター 男 34歳 ギャリック海賊団
藍玉(cdwy8209) ムービースター 女 14歳 清廉なる歌声の人魚
<ノベル>

ACT.1★危機を知るもの

 タイムセールはその日も、いつもどおり、にぎやかに終わった。銀幕市の人々は戦利品にほくほくしながら家路を辿る。
 しかし人々の波は、銀幕ふれあい通りを抜けようとした地点で、はたと流れを止めた。
 可愛らしいコウモリに似た生き物が、手作りのチラシを配っていたからなのだ。知る人ぞ知る、ブラックウッドの使い魔である。

  【まるぎんやめないでです】

 それは色つきの折紙や、まるぎんのチラシの裏を使用した、素朴なものだった。文字を覚えたての子どもが、小さな手にクレヨンを握りしめて懸命に書いたような、たどたどしいひらがなが踊っている。
 情報収集力に長けた使い魔はいち早く『だいすきなおかしをうっているおみせがなくなる』ことを知り得、そしてあるじに助けを求めた。
 ブラックウッドは色々な方法を教えてくれたが、しかし使い魔には難しいことはよくわからない。
 唯一、自力で可能と思われた、チラシ配布でのアピールを行おうと思い立ったのである。
 ぷぎゅう、ぎゅ、ぴゅぎゅー。
 チラシを手に、使い魔は必死に訴える。その言葉が理解できるものも、また、できないものも、馴染み深いこのスーパーに迫っている危機を知った。
 槌谷悟郎も、チラシを受け取るなり考え込んだ人々のひとりである。
 カレー店『GORO』を営んでいる彼は、材料を仕入れるさい、こういった個人客向けのスーパーもよく利用するからだ。
「これは大変だ。『まるぎん』がなくなったら痛手だなあ」
「なんだって? まるぎん、ヤバいのか?」
 偶然通りすがった狼牙が、ひょこっと隣から覗き込む。
「んなことになったら、ばっちゃんがカレーな手の肉を拾う(注:華麗なテクニックを披露するの意)場所がなくなっちまうじゃねーか」
「失敬、使い魔君。僕にも一枚、もらえるかい?」
 真船恭一が立ち止まり、手を差し出す。
「ここはよく利用するんだよ。……牛乳以外の食材を買いにね。そうか、経営が厳しいのか」
「何だって!?」
 胡麻団子をこよなく愛好するスルト・レイゼンが、今日の戦利品を手に眉を寄せる。
「ここの絶品胡麻団子が食べられなくなるのか? それに……、特売に急ぐ奥様方の行列も(注:遠目に)見れなくなるなんて」
「まるぎんは銀幕市の名物のひとつだからね。なくなってしまうのは切ないね」
「ぴゅい〜」
 思案顔の吾妻宗主の肩で、バッキーのラダも、同調するように鳴いた。
「僕ら主夫も、まるぎんが無くなると困ります。継続してもらえるのなら、助力はいとわないんですが」
 鹿瀬蔵人は、店長に聞いてみようと呟き、エコバッグを下げて、出てきたばかりのまるぎんの建物へ戻っていった。
「オレ、ここのカニクリームコロッケに育ててもらったんスよ」
 健康的かつ端正な顔を曇らせて、スーパーの建物を振り返ったのは長谷川コジローだ。綺羅星学園高等部3年の彼は、16歳のときにオリンピック出場を果たした、バタフライの名手である。
「えー? まるぎん、やめちゃうの? こまるー!」
 七色の羽をはたはたさせ、リャナも叫ぶ。この妖精はついさっきまで、試食コーナーでチーズケーキを食べてきたところだった。
「ここなくなったら、雨の日こっそりお菓子のばしょでねるとか! おイモの中でかくれんぼとか、おやつもらうとかできなくなるー。やだー!」
「良心的で品揃え豊富なスーパーの閉店は、ひとり暮らしだと死活問題ですよね。何とか、続けてもらいたいな……」
 綾賀城洸も、チラシを手に顔を曇らせた。眼鏡の奥の大きな瞳が、こころもち伏せられる。彼は、自炊用の買い物に来た帰り道であった。
「そんな……。アレグラ、かーちゃんと『まるぎん』行く。卵買ってもらう。今日も行った」
 生卵が主食で、1日につきLサイズ2パックを殻ごといけちゃうアレグラは、産地直送地鶏卵コーナーが大のお気に入りだった。事情を聞いて大変なショックを受け、呆然としている。
 出前の途中で通りかかったクラスメイトPは、
「僕も、まるぎん大好きなんだ。大事な思い出もあるし……」
 少し言葉に詰まり、しばらくして顔を上げる。
「あまり役に立てないかも知れないけど、……そうだ! きっと銀幕市の奥様も、9割は味方に違いないよ!」
 何かを思いついたようで、岡持を下げたまま自転車で走り去った。
「そうだね。思い出のある場所を、なくすわけにはいかないよな」
 片山瑠意は頷いて、クラスメイトPの背を見送った。紫の瞳に、深い哀惜が浮かぶ。
「漆さんと――今度、タイムセールのとき、俺のお気に入りのメンチカツと、カニクリームコロッケを交換しようって約束してたんだ」
 また、今度な。
 そう言って手を振った少年は、まだ思い出の中で笑っている。
「私たちで、何か出来ないかしら……」
 美しいおもてに片手を当て、朝霞須美も長い睫毛を伏せる。
「よっしゃあ、ここはおれも一鼻嗅いで(注:一肌脱いでの意)やるぜ!」
 狼牙は愛嬌たっぷりの瞳をきらめかせ、使い魔を手伝って、チラシを配布しはじめた。
「がはは、まるぎんは愛されてるなあ!」
 赤城竜が、シベリアンハスキーの頭をがしがし撫でながら言う。 
「皆からこんなに愛されてる場所なんだ。俺も、失くしちゃいけねぇと思うぜ」 
「ねぇねぇ、まるぎんが危ないって聞いたけどッ、何かできることは無いかな?」
 おさげを揺らし、軽快な身のこなしで神龍命が走り寄ってきた。よく通る声が、銀幕ふれあい通りに響き渡る。
「まずは、知恵を集めなくちゃかな? ……みんなァ! まるぎんを助けてェ!」
「つっちー、俺、伝書狸になるぞ!」
 しゅわわわん、と、唐草模様の風呂敷をマント代わりに、颯爽と太助が登場する。
「今こそ、小さいものクラブ席でつちかった、『ゆたかなじんみゃく』を生かすときだ。ばあちゃんもお世話になってるまるぎんを守んなくちゃな」

 使い魔の周りにできた人の輪は、見る間に広がっていく。
 そしてそれが、スーパーまるぎんの倒産を回避するプロジェクトの、もうひとつの発端となったのだった。

ACT.2★マダムキラーズ&かわいこちゃんズ、出動

 コンサルティングを請け負ったドクターDと有志一同は、店長からヒヤリングを行うため、まるぎんの後方事務室に集まった。事務机と椅子の位置をずらしてレイアウトを変更しており、ちょっとした会議場になっている。
 ちなみにこの場には、まるぎんの危機をしった協力者が全て、頭脳系も美貌系も一芸系も体力系も素朴系も可愛い系も各種兼任系も分類不可能な混沌系も、ありとあらゆるタイプが集合していた。
「皆さん……、この度のご協力、感謝します。もうすぐ店長もいらっしゃいますが、その前に、まるぎんの過去5期分の貸借対照表と損益計算書、キャッシュフロー計算書、及び補足資料に目を通してください」
 てきぱきと資料を配付しているのは流鏑馬明日だ。今日は白衣ではないドクターDの傍にいると、敏腕経営コンサルタントと美人秘書のコンビに見える。
「よし! 俺に任せとけ! 取り調べならお手のもんだ!」
 桑島平は、少々ずれた方向にやる気満々である。何となくかき回されそうな懸念を感じた明日は、ドクターに目配せし、
「ヒヤリングと取り調べは、全然相関がないのよ」
「桑島さんのお力は、戦略実行チームのためにお貸しいただけますか?」
 同時にそう言って、さりげなく難を逃れた。
「店長殿にひとこと礼をと思うて出向いたが……。いずこにおられるかな?」
 ぬ、と、現れたのは、斑目漆のあるじ、蘆屋道満だ。迫力のある風貌に、場の視線が一斉に集まった。物陰から、漆の部下と思われる、黒装束に仮面を付けた忍者が5人、そっと様子を伺っている。
 それまで、まぁみぃむぅやリオネと一緒に、隅でおとなしくしていたペス殿が、ぴくりと耳をうごめかし、低く唸った。
「ぐる、ぐるるる……?(訳:何かしら、このひと、はじめて会った気がしないわ……?)」
 グレーハウンドと視線が合うなり、道満は破顔する。
「ほほう、なんとも見事な闘犬であることよ。このような逞しい雄犬は見たことがないぞ」
「わんっ? わんわん、う゛わんっ!!!(訳:何ですって? どこに目をつけてんの。こんな美少女犬つかまえて超失礼なオヤジねっ!!!)」
「「「「「……!!!!!」」」」」
 ペス殿の吠えっぷりに肝をつぶし、物陰の部下5名がすくみ上がった。がたがた震えながらくっつきあって団子状態になっている。
「あの……」
 兎田樹が、おっかなびっくり一同に声を掛ける。
「店長室に呼びにいったんですけど……。店長、今は誰にも会いたくないって言ってます……」
「カウンセリング――コンサルティングも必要ないと仰っていますか?」
「そうなんです、奥さんにも、もうやめましょうよと泣きながら反対されたって落ち込んでて。……ひとりにしてくださいって……」
 樹は涙目でドクターDを見つめ、すがるように訴える。このうさぎ獣人は生活のためにまるぎんでアルバイトを始めて、ちょうど3ヶ月目であった。
「もうおしまいだぁ〜! バイトからいずれは上へと昇り詰め、たとえ銀幕市から出られなくとも、増やしに増やしたまるぎんチェーンで日本を経済的に支配するという、悪の幹部的壮大な計画もここまでかっ!」
「ちょっとぉ、そこのほのぼのな悪の秘密結社うさぎっ! そんなに簡単に夢(??)をあきらめちゃだめよ」
 聖なるうさぎ様レモンが、どこから取り出したやら天使の翼の意匠つきスピーカー(名称:エンジェルスピーカー)を片手に、会議場のテーブルにすくっと立った。

「銀幕市選りすぐりのマダムキラーたちに告ぐ! 奥さんを説得してポジティブにするのよ」
 レモンがまず、びしっと指さしたのは悟郎だった。いきなりご指名を受けて、悟郎は狼狽える。
「……そんな役回り、バツイチ男には荷が重いなあ……」
「やってみようじゃないか。嘆き悲しむ女性をほおっておいては、雄がすたるってものだ」
 銀幕市指折りのフェミニスト、皇帝ペンギンの王様が翼の先で、ぱふっと悟郎の背を叩く。
「今は消極的になっているだけで、奥さんも心の底では続けたいと思っているのではないかね」
「わたしも行こうかねぇ。奥さんとは商店街のよしみで顔見知りなんだよ」
 のんびりと言ったのはエンリオウ・イーブンシェンだ。彼の居候先は、銀幕ふれあい通りにある、お茶っ葉・茶道具屋さんなので、まるぎん経営者夫婦ともご近所づきあいがあるのだった。
「ちょいワル系ともふもふ動物系とのほほん癒し系が揃ったわね。いいわねいいわね、これでワイルド系とフェロモン全開系が加われば完璧ね」
「はいよ、ワイルドが必要なら参上するぜ」
 ギャリック海賊団のシキ・トーダが、軽く片手を上げ、立ち上がる。自薦するだけあって、いかにも海賊らしい風貌である。
「シキならばっちりよ。あと、誰とは言わないけどベルヴァルドとかベルヴァルドとかベルヴァルドが来てくれるといいなぁ〜」
 ベルヴァルドは未だ、この場にいなかった。が、聖なるうさぎ様の願いは、悪魔紳士にも通じたらしい。
 たった今――
 まるぎんの上空から、ベルヴァルドは華麗に降下した。
 お食事を兼ねての登場なので、密かに会議場の皆々様より精気を奪取してから奥さんのところへ行ったのは言うまでもない。

 そしてレモンは、さらなる呼びかけに打って出た。
「全美少女&動物系かわいこちゃんに告ぐ! 何とかして店長をヒヤリングの場に引っ張りだすのよ。あたしたちが一致団結して『や・め・な・い・で(はぁと)』って言えば、きっと考え直してくれるわ」
「いいかんがえ! あたしにまかせて! はこぶねにのっててKOよ!」
 リャナが、レモンの頭上をぱたぱた旋回する。
「『大船に乗ったつもりでOK』ってことかしら? 可愛いわね」
 藤代陽子が、微笑みながらツッコミを入れてくれた。現在、銀幕市内で下宿を経営している陽子は、『白銀はるひ』という名で数々の映画に出演した女優でもある。とても40代後半には見えない、若々しい美女だ。
「美少女って年じゃないけど、私も行っていい?」
「いいんじゃないか? 店長は白銀はるひのファンらしいから。さて、と……、一緒に行くよ、生活かかってるからね」
 淡々と言って、続歌沙音も立ち上がる。フリーター歴の長い歌沙音は、最近まるぎんでバイトを始めたばかりなのだった。
「や・め・な・い・で、っていうの……?」
 歌沙音の普段の無表情っぷりをよく知っているルウは、彼女がテンション高く情感たっぷりにその台詞を発する図が想像できず、目を丸くする。
 返事代わりに歌沙音は、ルウに女装グッズ一式を手渡した。
「当然、君も行くんだよ」
「おんなのこのふくに、きがえるの……? いいけど、どうして?」
 きょとんとするルウに、君なら似合うはずだから、と、答になってない答を告げる。
「洸も更衣室借りるんなら、着替え手伝ってやって」
「はい、いいですよ」
 洸は快く頷く。こういう展開になることを予測していた洸は、用意のいいことに、昨年のクリスマスにレーギーナ女王の美★チェンジに巻き込まれた際の衣装を持参していた。エメラルドグリーンのラインが入った、少しレトロな雰囲気のセーラー服である。スカート丈はマニア垂涎の膝上15cm、合わせるかつらは、さらさらロングのストレート。
 いったん更衣室に引っ込み、しばらくして現れた美少女ふたりに、関係者一同から大きなどよめきが起こる。
 ルウも洸も、どこからどう見ても可愛い女の子にしか見えない。
「びしょうじょ、ふえた! あたしたちも行くよーリオネ、ぎんぱつペアで店長メロメロ〜!」
「う、うん」
 リャナに手を引かれ、リオネも店長室に向かう。
「余もまいろう。店長がネガティブなことを申したら『ツン』をすれば良いのであろう?」
 ベアトリクス・ルヴェンガルド陛下が、満を持して立ち上がる。さすがは完璧ツンデレロリ美少女、高度なワザを心得た口ぶりであらせられる。
 その後を、狼牙が追いかけた。
「おれもいくぞ。どーやったらかわいく見えるか、カガミ見ながられんしゅーしてきたんだ」
「ちょお待ち。わしも行く。……おおっと」
 全身鮮やかに赤い、ふわふわの毛並みを持つ子狐が、二日酔いのふらつく足で狼牙に続く。いつもは成人男性の姿を取っている晦である。
 本当は戦略実行チームに参加しようと思っていたのだが、つい酒を過ごしてしまい、人型を保てなくなったのだ。なので今日はかわいこちゃんとしての参戦である。
「私も行かなきゃ! だって心は美少女だもの!」
 どこからどう見ても男性なジュテーム・ローズが、堂々と胸を張り、かわいこちゃんズに混ざる。
 それを見て、心も見かけも美少女とは56億7千万光年ほど遠い道満も、ふむ、と、呟く。
「ならば我も、店長殿に相まみえようぞ」
「ぷゅぎゅう、ぎゅむ(訳:ぼくもいくです。おやかたさまもちらしどうぞです)」
 使い魔が、道満に手書きチラシを渡し、共に向かう。

 皆から少し離れて、ルアも続いた。
 いつの間に着替えたやら、アルナの(記録者注:話せば長いことながら、レーギーナ様んとこでアルくんのほうがチェンジした超キュートなアレですよ。ご興味のある向きはスタジオ閲覧プリーズ)格好で。

 ★ ★ ★

「はじめまして、美しい奥方」
 ベルヴァルドはフェロモンオーラ全開の微笑みで歩み寄り、そっと手を取ってその甲にキスをする。
 どこからか、うっとりするジャズのBGMが聞こえてきそうな雰囲気である。
「これ、大家さんからですよー。いつもお世話になってますからって」
 エンリオウは日だまりのように微笑み、お茶葉詰め合わせを差し出す。
「ああ、そんなに泣いて! 俺が慰めてあげよう、このもふもふの羽毛で!」
 王様はソファにジャンプして、奥さんの右隣に座った。
「気晴らしにどこかに遊びに行くんなら、つきあいますよ。何ならこっちの、元プロデューサーと一緒に」
 シキは不良壮年っぽい笑みを浮かべ、どうアプローチしたものかと考えあぐねている悟郎と肩を組んだ。
「……ま、あ……。あ、あの、皆さん、お揃いで」
 まるぎん3階の居住スペースに閉じこもっていた奥さんは、恋愛シミュレーションゲームもまっつぁおなメンバーの来訪に肝をつぶした。
「もしかしたら、お店の継続希望のためにいらしてくださったのかも知れませんが、でも、もう……」
 うつむく奥さんの左隣に腰掛けたベルヴァルドは、手を握りしめたまま、涙の乾かぬ目をじっと見つめる。
「このまま静かに暮らすなど勿体無い。活力に満ちた貴女のほうが魅力的ですよ」
 ホントは、活力に満ちた、のあとに、精気も美味で、という文言が入るのだが、そんな本音は表に出さないのが悪魔紳士クオリティである。
「まるぎん継続に反対のわけを聞かせて貰ってもいいかなぁ。奥さんは、昔から頑張っている人だった、と、大家さんに聞いたのだけども」
 ご近所のおじいちゃんが悩み相談にのるような調子で、エンリオウは促した。しばらく黙り込んでいた奥さんは、やがてため息とともに打ち明ける。
「経営のことだけじゃなく……。このところ、哀しい事件が多くて、辛くなって。この街でがんばり続けることも、辛くなってしまったんです」
「いろいろ、あったからね」
 王様は相槌をうちながら、それでも、と言う。
「気持ちはよくわかるが、今諦めたら、心残りになるのではないかな。最後まで、足掻いて足掻いて頑張ってみないか」

 まるぎんを愛する人、助けようとしている人たちが、次々にここに集まっているよ――

 王様の言葉に、奥さんは顔を上げる。
 少し心を動かしたように見えた、そのとき。

「奥さーーーん! やめないでくださいーー! これ、継続を希望するみんなの署名ですっ!」
 ばーん、と、ドアを開け、クラスメイトPが転がり込んできた。
 彼はずっと自転車で街を疾走し、主婦をターゲットに体力の続く限り署名活動をしていたのだ。
 九十九軒常連→そのご近所→銀幕広場という流れの中で、トラブルにも巻き込まれたたしく、あちこち大きな絆創膏を×印に貼っている。
 傷だらけの手で差し出された用紙には、見知った名前がずらりと並んでいて――
 息を呑む奥さんの腕を、シキが掴む。
「よし、奥さん。結論はすぐに出さなくていいから、とりあえず俺たちと一緒に、遊びに行きましょう。いい店があるんですよ」
 どこへ行く気だ? と目顔で問う悟郎には、
「ギャリック海賊団提供の『出張海賊喫茶』さ」
 と、謎めいた答が返ってきた。

 ★ ★ ★

「あんたは完全にかわいこちゃんズに包囲されているわ。出てらっしゃい店長!」
 店長室の前でエンジェルスピーカーを構え、レモンは訴える。
「これまでのタイムセールの熱気を忘れるんじゃないわよ!!! それはまるぎんが愛されてる証拠なんだから!」
「あの……。お願いです。ここを開けてください」
 洸も切々と言いつのる。柔らかな、やさしい声で。
「あのね店長、モモに穴あけたのリャナじゃないからね! えいがから来た天井のコーモリさん一家だよ! よく泊めてもらうんだよ! ……むごっ」
「そんなことカミングアウトしてどうするの」
 いらんこと言うリャナの口を、レモンが塞いだ。
「ねえ、店長さん。聞こえる? わたし、ここの、ムービースターが提供している野菜コーナーが大好きなのよ」
 ジュテーム・ローズが、こんこんとドアをノックする。
「いつも、いろんな面白い効果が出るから気に入ってるの。あれって、店長さんの発案なんですってね」
「……ええ」
 ようやく、扉ごしに、店長のいらえがあった。
「ムービースターの生活支援と、仕入先の確保をと、考えまして……」
「一石二鳥の、いいアイデアだと思うわ。お店全体のことも、もう一度そんな風に考えられないかしら?」
「店長ー! 僕の時給を下げたってかまいません。皆も応援してくれますし、頑張りましょう!」
 うさぎ姿に変貌した樹が目をうるうるさせ、健気に言い切った。とても悪の幹部とは思えない。
「……兎田くん。いつも、時給計算の時に5分未満を切り捨てると号泣する君がそこまで……」
 かちゃり、と、ドアが開き、憔悴した店長が姿を見せた。
「店長殿、お初にお目にかかる」
 道満が深々と頭を下げる。
「――あなたは?」
「蘆屋道満と申すもの。漆に、美味なカニクリームコロッケなるものを食べさせてくれたことに御礼申し上げたく、参上した」
「お館さま……ですね。斑目くんからお話を聞いたことがあります。お買い求めいただいたとき、これ絶対、お館さまも気に入ると思うわ、と、仰ってくださって」
「左様か」
 頭を下げたまま、道満は言う。
「この度のこと、多々ご事情はおありだろうが、願わくば今後とも続けてはいただけまいか。あの不出来な部下の愛した味が失われるのは忍びなく――」
「それは……。しかし……。ともかく、どうぞ頭を上げてください」
 動揺する店長に、たった今ダッシュしてきたアレグラが、両腕を伸ばしてしがみつく。
「まるぎん、やめるダメだ、許さん! まるぎんの卵うまい。食べられなくなる、アレグラ死んじゃう!」
 泣きながら店長の首に手を巻き付けるアレグラを、歌沙音が冷静に止める。
「そんなに絞めるな。店長のほうが先に死ぬぞ」
 アレグラが手を離したあたりで、ルアが極上の笑顔で詰め寄る。
「あんまりウダウダ言うようなら半殺しにしますわよ。倒産させてごらんなさい、あなたの人生も崩壊に」
「これこれ、きょーはくしてどうする。こういうときはこんな風に……」
 店長に聞こえぬように囁いてから、ビイ陛下が一歩前に出た。
「ばか! わかってくれないなら、もう店長なんか知らないッ!」
 絶妙の角度でツンとそっぽを向き、かわいらしく語尾を上げるさまは匠の技である。
 続いて洸が、瞳を潤ませながら訴える。
「どうか営業を続けてください。ひとり暮らしなので、まるぎんがなくなると、とても困るんです」
「こんなに経営の存続を望む人がいるんだ。諦めないで欲しいな」
 赤い子狐の晦も、まっすぐに店長の目を見つめる。
「お願い……。ね?」
 陽子も妖艶に微笑む。
「いや、そのぉ……」
 店長の動揺がいっそう深まったのを見て取り、レモンがぱちんと指を鳴らした。

 レモン・狼牙・歌沙音・樹・ルウ・ジュテーム・リャナ・リオネ・洸・アレグラ・晦・ルア・ベアトリクス・ブラックウッドの使い魔が一斉に唱和する。
 通常のキャラを遙かに超越してたりしてなかったりしつつ、渾身の、澄み切ったきらきらした瞳と1オクターブ高い声で。

「や ・ め ・ な ・ い ・ で (はぁと×14)」※つっちーはぷぎゅー語で参加
 
 道満は、無言で頭を下げたままだ。
 
 ――そして、待つことおよそ5分後。

「わかりました。そこまで仰ってくださるなら」
 店長は涙ぐみながらゆっくりと頷き、会議場へと足を向けたのだった。

ACT.3★最高のコンサルティングチームと最強の戦略実行チーム

「【夢の街の暮らしを、食材で楽しもう】っていう、スーパーまるぎんの経営理念とコンセプトは、間違っていないと思うんだよねー」
 店長からのヒヤリングを終え、柊木芳隆は言った。穏やかな表情はそのままに、くわえていた煙草を、事務机に置かれた灰皿に押しつける。
「年間総売上高もねぇ、下がってるわけじゃないんだよー。むしろ5期連続で向上しているし、赤字が出てるわけでもない」
 なのにどうして、こんなにキャッシュフローが良くないんだろう、解せないねー、と、のんびりした口調で核心を突いた。
「……それは……、いえ」
 店長が口を開きかけ、言いにくそうに口ごもる。
「売上が上がっててもさぁ、営業利益がこんなに落ちてるのは、売上原価と販管費が増大してるからじゃん? でもたしかに、まだ純利益は出てるんだね。なのに倒産しちゃうものなんだ?」
 浅間縁が、決算書類の数字を追いながら、商業科の高校生らしい分析をする。
 いっそう気まずそうになった店長を見て、レオニード・ミハイロフが呟いた。
「ごく最近、取引先金融機関の貸し渋りが発生したね? だから手元に支払い用のキャッシュがない。典型的な黒字倒産だ」
「……はい。実はそうなんです……」
 ロシア有数の大企業、エクリプス社の代表取締役にそう指摘され、店長はうなだれる。
 なんでも、まるぎんの経営スタイルと営業力を高く評価し融資に応じてくれていた、銀幕信用金庫の支店長が早期退職し、市外に引っ越したのだと言う。新しい支店長は、ムービースターに好意的なまるぎんの経営姿勢をこころよく思っておらず、前支店長が許可していたはずの追加融資を撤回したばかりか、今までの借入金を一括返済するようにと要請してきたそうなのだ。
「ああ、そういうことか! ぶっちゃけ、どんな赤字会社でも、銀行がお金貸してくれさえすればつぶれないって、簿記の授業で先生がいってたっけ」
 縁が、納得して大きく頷く。
「資金不足が問題ということであれば、不躾ながら、私が何とかできるが? 名義上のオーナーとしてまるぎんを土地建物ごと買い取ったうえで、経営権はこのまま店長に、というのはどうだろう? いつか銀幕市の魔法が解けたときは、名義ごと、無償でお返しする」
「そんな! うちと何のしがらみもないレオニードさんに、そこまでしていただくわけには」
 破格の提案に、店長は滅相もないと首を横に振る。
 たぶん断られると思った、と、レオニードは笑みを見せた。
「失礼をお詫びする。私は漆くんの痕跡を残したかっただけで、他意はない。彼と面識があったわけではないけれど、姪のリゲイルを何度も守ってくれたし――それ以上に、彼女に家族の暖かさを思い出させてくれたのが彼だと思うのでね」
 お気持ちだけ頂戴しますと言った店長に、それまで黙って成り行きを見ていたリカ・ヴォリンスカヤが、腕組みを解いた。買い物ついでに会議場にきたようで、ふりふりエプロン姿である。
「私、よくわかんないけど、お金くらい借りとけば? そうしたら倒産は免れるわけだし」
「でも、そんなご迷惑――」
「ここあなたの店なんでしょ。お店残したいんだったら、あなたが一番大切にしたいものだけ死守すれば、それでいいんじゃない?」
 会議場をぐるりと見回してから、リカは店長に向き直る。
「みんなそれぞれ守りたいものがあるから、こんなに集まってるのよ。もう一度考えて。ここは、誰のための店なの?」
 お客のためなの? 従業員のためなの? 自分の思い出のためなの?
 リカの問いかけに、店長は雷にでも打たれたように息を呑む。
「私は……、そんなたいそうなことを考えて営業していたわけではなく、ただ……、皆さんが食材を楽しそうに買うお姿はとても幸せそうで、そんな光景をいつも見ていられたら私も幸せだなと、そう思っていただけで」
 やがて店長は大きく息を吐いて立ち上がり、レオニードに深々と頭を下げた。
「レオニードさん。どうか当座の融資をお願いします。必ずお返ししますので」
「喜んで」
 レオニードが頷く。
「これで資金面はクリアだね」
 それまで何故か皆に背を向けていたルイス・キリングが、事務椅子をくるりと一回転させた。
 ……ぐるぐる瓶底眼鏡をかけ、ソロバンを構えている。異色天才コンサルタントっぽい演出である。
「次は肝心の店舗展開だ。売り場構成と商品内容の徹底的な見直しをするよ。ドクターD! 全商品の季節指標データは揃ってるんだろうね?」
「……これよ」
 リアクションに逡巡しているドクターDを庇うように、明日が資料をデスクに並べていく。
 それを見てルイスは、何かを思い出したように叫ぶ。
「アプローチをどうしようかと思ってたんだけど、今ひらめいた! ここにくる途中でクラPが、銀幕市の奥様たちに半泣きで署名運動してたのを思い出してさ。つまり『P』だよ、PPPPPP」
 コンサルティングチームの面々は、ルイスがマーケティング・ミックスの概念「6P」のことを言ってるのだと気づくまでにしばらくかかった。その進言があまりにも正統派だったので。
 ともあれ、以下、6Pに乗っ取って、コンサルチームの話し合いは続けられたのだった。
 すなわち。

 ・Product (製品)
 ・Place(流通経路)
 ・Plice(価格)
 ・Promotion(販売促進)
 ・Publication(広告)
 ・Personal selling(人的販売)

「売上原価を抑えるために、仕入ルートや価格を見直したほうがいいだろうねー。そのためには安さだけじゃなく、お客様が何を一番求めているか、市場調査を行う必要があると思うんだよー」
 太助くん、と、芳隆は、スタンバイ中の子狸を見やる。
「豊かな人脈を生かして、市場調査、お願いできるかなー? 体力とフットワークが必要になるけど」
「お、おう! まかせとけっ!」
 太助はむんと胸を張る。
「命ちゃんもやるよォ! 大丈夫! ボク結構体力あるほうだし。調査ついでに、見世物小屋に見てきてくれるお客さんにも宣伝するよ」
 命も、笑顔でドンと胸を叩く。
 先ほどからやる気をもてあまし気味だった桑島も、ここぞとばかりにアピールした。
「うん、口コミの宣伝は効果的だな。よし、俺も市場調査に回るぞ! これでも職業柄、 馴染みの人間も多いしな」
「経営の知識はないが、体力ならまかせとけ! しかしこの部屋、結構暑いな」 
 ジャージを脱いだ竜は、その下に大きく『熱血!』と書かれたTシャツを着ていた。頭にはタオルを巻き、手には滑り止めの軍手をつけて、もう何でも来いな状態である。
「皆の血潮が燃えておりますからのう〜」
 珊瑚姫は、やはり『熱血!』文字入りの大きなうちわで、竜をぱたぱた仰ぐ。
「派手なことは得意じゃないけど……。僕にできることなら手伝うよ」
 レオ・ガレジスタが、心があたたかくなるような笑顔で言う。
「銀河モータースのひとたちやお客さんに、いろいろ聞いてみようかな」
「がははは! よし、いくぞみんな!」
 しゅっぱーつ、おっけいィ、よおーし、いくぞ、はいですえ竜おとっつぁん〜、う、うんっ。
 えいえいおー!
 円陣を組んで気合いを入れてから、戦略実行チーム【市場調査班】の面々は、一斉に駆けだしていった。

  ★ ★ ★

「市場調査の結果が出たら、次は仕入対策と価格交渉かなー」
「だね。卸売業者を通しちゃうとその分高くなるから、生産者から直接仕入たほうがいいよね」
「地元密着は必要だよね。商品によっては問屋を使うことも必要だろうけど、その場合は大手にまとめて、一括発注を行わないと」
 すっかりコンサルタントが板についた、芳隆、縁、恭一の提案に、スルト・レイゼンが名乗りをあげる。
「甘味関係なら任せてくれ。胡麻団子愛好会や甘味めぐりで培った人脈や、情報が活用できる」
「あっしにも『仕入』と『価格交渉』とやらをやらせてくんな。困っている衆を放っておいちゃ、男が廃るってもんだ」
 頼もしく言い切ったのは旋風の清左だ。
 この世界の経営とやらはわからないなりに、全力を尽くした彼のおかげで、やがて銀幕市内の農家がことごとく、
「どうだい、漢気を示す良い機会じゃねぇか。助太刀したとなりゃあ、旦那の評判もあがるってもんだぜ?」
 と、じぃ〜んとくる任侠節で説得されることになったのである。

「あの、ドクター。新商品の開発なんだけど」
 りんはおが、おずおずと片手をあげる。
「銀幕市の特徴を生かしたグッズを、外部都市へネット通販するのはどうかな? たとえば、レアグッズつきのお菓子……、男性スターやファンに協力してもらって、各種女装写真カードつきチョコとか……」
「そうですね、通販部門を立ち上げるのだったら、まるぎんだけじゃなく、名画座や商店街の他のお店等と提携してもいいかも知れないですね」
 ドクターがにこりと頷く。明日が資料の中から、名画座のパンフレットと銀幕ふれあい通り商店街の店舗一覧表をピックアップした。
「もちつもたれつと言う事ね。提携関係は、販促にも使えるんじゃないかしら……。まるぎん、商店街、名画座共通のポイントカードを作成しましょうか」
「ポイントカードは妙案だね。あとさ、まるぎん専用の割引クーポン券を作って、会計のときレジで配るのってどうかな? 月曜日は赤、火曜日は青、って感じに色違いにして、7色集めるとカニクリームコロッケ1個かメンチカツ1個と交換できるの」
 真山壱は先ほどから、名刺サイズのポストイットを7枚並べ、それぞれ違う色のマジックで塗りつぶしていた。それはこの提案のためだったらしい。
「同じ色が揃っても有効期限前なら割引券として使えるし、もし期限が切れた券でもコロッケ券として使えれば嬉しいと思わない?」
「そうね。せっかくだから、ポイントカードと割引券のアイキャッチとして、きみょ可愛いマスコットを公募して定着させていいかもね……」

 以下は、コンサルチームの会話を耳にしたかわいこちゃんズのごく一部の囁きである。
「にゃあ? んにゃー?(訳:ねえ、ビイ。明日の言ってる『きみょ可愛い』ってどういう意味?)」
「……さあ? きみょうだけど、ある意味かわいい、ということではないのか?」
「リオネ、ペスちゃんみたいな犬のことだと思う」
「ペス殿はたくましいオスだから違うであろう」
「わんっ! ぐるるっ、う゛わんっ(訳:ビイぃーー! あんたまであたしのこと誤解してんのねー!)」
「まぁみぃむぅも応募してみたらどう?」
「んにゃああー!(訳:なによルア。あたしたちに『きみょ』はつかないのよ! ルアこそ、女装写真コレクションチョコに協力しなさいよ!)」

「順調順調。次は店舗演出の実施に移ろうか」
 器用にソロバンをはじきながら、ルイスはぐるぐる眼鏡をちょいと掛け直す。
「商品の陳列管理は、真船さんと相談してこんな感じにまとめてみたんだけど」
 売り場平面図を広げた縁が、正方形のポストイットに書き込みをしながら、並べていく。

 ・客の動線を考慮し、セール品は奥に、回転の速い日常品を手前に移動。
 ・主力商品はPOPによる演出を行う。臨時商品は季節や行事に合わせた楽しいディスプレイでアピール。
  (例:生鮮食料品には産地に関するの説明カードを。肉魚青果の棚にはおすすめレシピをつける)
 ・目を惹きやすい季節商品には、定価の上にわざと高めの値段を書き二重線で消すなどして、お得感を出す。

 最後のポストイットを指さして、縁はドクターDを見やる。
「皆、セールとか割引って言葉に弱いでしょ。実際は定価のままなのに得した気分になって、争って買ったりするんだから、人間の心理って怖いよねぇ。ドクター?」
「自分と似た立場の人が大勢いてセール品を買いこんでいる、そして、この商品にはそれだけの価値があるという思いこみ――『同調行動』にのっとった、巧みな手法だと思いますよ」
「いやー、浅間ちゃんもドクターも今日は黒くてイイねー。その調子で経費節減対策、いってみようか、どうかな式ちゃん」
 ルイスにご指名を受け、式純也は身を乗り出す。
「前にいた映画館でもいろいろ言われましたけど、まず節電ですね。たこ足配線がないかどうかをチェックして、見つけ次第矯正しましょう。あとは倉庫整理ですかね。未使用の備品があると勿体ないですし」
「そういえばお店や事務所で使ってる機械、結構、古くて、傷んでるのも多いよね」
 市場調査を終えたレオが、事務所と売り場を確認して、戻ってきた。
「みんな、買い換えなくても、もっともっと働けるよー。ちょっとだけ、直してあげたら、ね」
 工具を取り出しつつ、レオはにっこりする。彼の手に掛かれば、どんな機械も新品同様に生き返るのだ。
「あ、あの、……え……っと、改装、やります……か……? 」
 対人恐怖症のきらいがあるセエレも、挙動不審気味ながら名乗りをあげる。腕のいい船大工の彼女は、大工仕事スキルを目いっぱい使い、店内改装に協力してくれると言う。設計図を受けて夜中にこっそりやってもいいのなら、という条件付きであるにせよ。
「ところであのー、経費節減とは逆行しますけど」
 純也がおずおずと問う。
「今日の参加者には、売れ残った野菜をもらえるとか、ありませんか? 生活が苦しいもので」
「いや、ちゃんと経費節減に乗っ取っているよ。たとえば今後、安い時給でボランティアのバイトを雇うのであれば、そういう付加価値は必要だろうと思っていたところだ」
 レオニードが頷く。
「経費関係はそんな感じかな。で、広報企画だけどさー、費用かかるんだよね。駐車場スペースで定期的に週替わりでのイベントできないかとか、考えてはみたけど」
 またもソロバンをはじき出したルイスの手元を、リゲイル・ジブリールが覗き込む。
「お金のことなら心配しないで。イベントするんなら、お財布担当になるよ?」
「リガ」
 気遣わしげにレオニードが声を掛ける。それまでこの叔父と姪は、まるで相手が同じ会議場にいないかのように、どこかよそよそしく距離を置いていた。
「それくらいいいですよね、店長さん? ボランティアだもん」
 美少女にそう言われては、店長が断れるはずもない。これで、イベントスポンサーは決まった。
「何はともあれ、セール以外でも客寄せができりゃ元は取れるんじゃねぇの? とりあえずさー、店頭ライブイベントとかどうよ?」
 このときを待っていた、とばかりに、シュウ・アルガが進みでる。
「ライブ? 大かがりすぎないかなぁ?」
「つかもう、バンドメンバー集まってるんだよな。有志で」
 シュウは笑いながら、親指で後ろを指さした。
 いつの間に集合したのやら、ずらり、と、そうそうたる面子が集まっている。
「まるぎんのカニクリームコロッケには思い出があるから、無くなって欲しくないんだよね。下宿でシュウにライブ案を出したの俺なんだけどさ、こんなに協力者が集まってびっくりだよ」
 バンドメンバーを振り返り、くすぐったそうに苦笑したのは岸昭仁だ。
「まさか『あの』来栖香介がキーボードで参加してくれるなんて思わなかったぜ」
「悠里や瑠意に引っ張られたんでな。バンド活動はボランティアということにしといてくれ……と、萩堂が言ってる」
 香介はむすっとしながらも、ルイスの前に来て、資料の空白にさらさらと「店内のBGMを見直せ」と書き加える。
「天候や時間帯、店内の状況で流す曲を変えたほうが、販促上も有効だろう」
「なんだかんだ言って、この件に来栖さんが協力的なのはよくわかりますから、私も出来る限りのフォローはしますよ。バンド終了後、演奏した曲を店内BGMに編曲して提供するとまで言ってますし」
 萩堂天祢は柔らかな微笑を浮かべ、店長に、
「他にもBGMが必要でしたらこれを。有線放送でもいいのですけどね」
 と言いながら、安くて使用料の発生しない音楽集の販売元情報を伝える。彼はこれまでにも、戦略実行チームに交渉法のアドバイスをするなど、さりげない気配りを行っていた。
「できれば来栖さんのその曲、CMのBGMにも使っていいですか? 僕、まるぎんのCM作ろうと思うんです。ロードムービー風の」
 ビデオカメラを手に、そう言ったのは小日向悟である。
 彼の発案は総合的な視点に立っていた。店を起点に町中を撮影することにより、地域密着度のアピールと、出会う人々に、自分もCMに出られるかもしれないというお楽しみイベント感が演出できる。それは知名度と集客率のアップに繋がるし、さらに仕入先や新規顧客の獲得を期待できるかも知れないのだ。
 呆れるほどバイトの人脈が豊富な彼は、ローカルテレビ局にもつてがあるらしい。
「オーケイ、俺も手伝うよ」
 明るくオーバーに、エディ・クラークが両手を広げる。
「俺は役者だからね。『演出家』の指示通りに動いてみせるよ。なにか派手なことが必要なら、俺のロケーションエリアの効果が役に立てるんじゃないかな」
「じゃあ、CM撮影に同行してくれますか? 演出効果が必要なときは、よろしくお願いします」
 悟とエディが連れ立って出発したのをきっかけに、それぞれのチームは、さらなる意見を詰めることに没頭し――

 驚くべきことに、さしたる日にちも経たぬ間に、新生まるぎんが改装OPENする運びとなったのだった。

ACT.4★彼らを、見よ

 時間は少し、遡る。
 まるぎんの駐車場スペースに突如、『出張海賊喫茶』なる臨時カフェが出現していた。
 セエレが徹夜で整えたその店の看板娘はハンナ。ロケーションエリアを展開して30分間だけ若い頃の姿に戻って客引きを行っている。
 セクシーな衣装のハンナ嬢に声を掛けられた源内がほいほいと座ってたり、コンサルチームや戦略実行チームの男性陣が休憩していたりなど、なかなか盛況である。
 マスターはノルン・グラスだ。入れたコーヒーを自分で飲んだりなど、適度にサボり、適度に店の様子に気を配りながら飄々としている。
「サボってないで手伝って……」
 マスターにツッコミを入れつつ、ヴィディス バフィランは、自作のウェイター服を身につけ、忙しく働いていた。料理の仕込みの手伝いから、デザートの飾り付け、来客の案内から接待まで。レジ近くには、自作のデザイン服とアイテムを置き、こまめな販売も忘れない。
 素晴らしい料理人であるところのアゼルは、主食からスイーツまで、トッピング等はヴィディスに任せなからも、手際よくこなしていた。色とりどりのプティフールが並び、華やかである。
 これをきっかけに海賊喫茶の知名度を上げ、売り上げアップを狙っていたりする気持ちはあるものの、皆、基本的には、まるぎんの力になれればと思ったうえでの行動であった。

 シキと悟郎に伴われ、客席についた奥さんは、給仕役になったシキからハーブティーを入れてもらい、ふと呟いた。
「忘れてたわ。魔法が掛かる前から、ここは夢の街だった。映画の中のひとたちは、みんな、私の友達だった。それは今も変わらないのに、何を弱気になってたのかしら」

 ――もう少し、頑張ってみるわ。ありがとう。

  ★ ★ ★

 レイアウトも品揃えも一新し、新しくなった売り場には、強力な応援が入っていた。
 清潔な白いシャツを腕まくりし、黒のエプロンをつけてレジを打っているのは吾妻宗主である。
「いつもありがとうございます」
 おつりを渡す時のそっと手を添えての微笑みに、銀幕市の奥様がたは長蛇の行列を作っている。
 バッキーのラダはエプロン手甲三角巾を装着してレジ機の最前上部に立ち、小旗を振りながら小さな笛をぴ! ぴ! ぴ! と吹き、行列の誘導をサポートしていた。
 妖狐のモミジは盛況な店内に驚きながら、小柄な身体を足台でカバーし、一生懸命レジ打ちを行っている。
 頬が紅潮しているのは、目まぐるしい忙しさが、少しずつ楽しくなってきたからのようだ。
 会計を終えたお客様に割引券とレシートを渡しながら、ぺこぺこお辞儀するたびに、可愛らしい耳と尻尾が揺れた。
 ひときわ目を惹く色っぽいうさ耳は、ニーチェである。
「いらっしゃいませ〜ん。合計1万円以上お買い上げのヒトには、とっておきのサービスがあるわよぉん」
 モデル並の抜群のスタイルで、男女問わず愛想とお色気を振りまきながらレジにいるものだから、こちらには男性がずらっと並んでいる。
 ……とっておきのサービスとは割引券のことで、それはお買いあげ金額には関係ないのだが。

 後方では津田俊介が、念動力による商品の運送に一役買っていた。
 銀幕市内の地理をバイク便バイトのおかげで把握しているため、市内の仕入れ先とは最短ルートでの運搬が可能なのである。
 店内での商品陳列には念動力を使用する。まるでフィルムの逆回しのように、スピーディに商品が独りで並んでいく。見ていたお客からどよめきが起こった。
 アルは、工事現場のバイトで使っていたツナギを着用し、その怪力を生かして荷物や資材の運搬搬入に専念していた。イベントのステージ用資材から販売商品まで、手早く運んでは機敏に品出しをしていく。
 蔵人もそれを手伝っている。応援の署名を集めたりなどのボランティアも行っていたのだが、力仕事や、もしくは調理場が性に合っていると判断したからであった。
 古森凛は腕に腕章をつけ、店内案内係として売り場を巡回していた。何かを探している人や迷子を悟り、言われる前にさり気なくエスコートするなど、きめ細かい気遣いと優しげな笑顔は主婦層に人気を得たようだ。

 カロンは黙々と、店内を清掃していた。動くたびに鈴が幽かに鳴り、まるで葬列を行くようだ。
 肉類や魚類のコーナーでは手を合わせて拝み、客が買いにくいムードになるなどの弊害はあるにせよ、泣いている迷子がいれば、無言で忍びより、手を引いて母親の元まで案内してくれる(注:冥府に連れて行かれそうな衝撃に子供は泣き止んでいる)など、ボランティア精神全開であった。

「まるぎんの夢と希望を守る正義の警備員、本気☆狩る警備員あーる!素敵に無敵に見参です!!」
「まるぎんの愛と平和を守る正義の警備員、本気☆狩る警備員るいーす!素敵に無敵に見参!!」
 そして本気☆狩る仮面コンビが、【警備員★】という腕章をつけただけのいでたちで、警備アルバイトに加わったからさあ大変。
 怪しい蝶々仮面の乱入に、同僚の警備員たちはあやうく110番通報しかけたり、騒がれてもるいーすはいっそうイイ笑顔であーるにドス黒い釘バットで殴り飛ばされて初の空中きりもみ10回転半をかまされたりなぜか『皇帝ダリア』に変身したベアトリクスにぶっとばされたりそれでもお客さんは新手の売り場内パフォーマンスと誤解して拍手喝采だったり。

 店内にある休憩コーナーに、突如、異色イベントが発生した。
 それは店頭ライブではなく、その……、ええと……。
 クロノと、ノリン提督と、ケトによる……。

「楽しい時間はいかがかにゃ、愉快な時間はいかがにゃ♪」
 あ、おっきな猫ちゃんが歌ってるー、と、子供たちが寄ってくる。
「ネコじゃないにゃ、神様にゃ♪ 神様にゃから好き放題、都合悪けりゃ時間戻すにゃ♪ 我輩偉い神様にゃ、お布施寄越すにゃ愚民ども♪」
 どさくさ紛れに何歌ってるアルー! と、ノリン提督も絶叫する。
「呼ばれて飛び出て提督アルよ♪ ノリノリ妖精ノリン提督」
「Gは帰るにゃー♪」
「Gじゃねぇアルぷりてぃ妖精、ノリン提督。海賊じゃね? ってツッコミダメダメ♪ 糊じゃねぇけどひっ憑くアルよ! 海苔は大好き、ノリこそボクの全て〜アル〜♪」
「忘れてないかにゃ? これはまるぎんライブにゃ♪」
「ま、まるぎん、スーパーまるぎん、安くて新鮮スーパーまるぎんアルよ♪ 忘れてたわけじゃねぇアルよぉぉぉ!」
 何かを誤魔化すよーに、ノリン提督はシャウトする。
「みんなー! 楽しんでいけよぉぉぉー!」
 ふたりのバックで、テンション高く笑いながら、ケトがその翼を駆使し、曲芸を披露していた。
 本人いまいち何をやっているのかわからない感じではあるが、その身軽さ、柔軟さ、技の確かさは、人々の注目を集めている。
 やがて猫神様は、いろんなものを超越したデスメタル風絶叫をなさった。
「神 の 肉 球 の 上 で 踊 り 狂 う が い い にゃ ーーー!!!」
 んが、結局はお子様たちにわーいと取り囲まれ、猫ちゃーん、おっきな妖精さーん、ちっちゃな妖精さーんと、もみくちゃにされたのではあるが。

  ★ ★ ★

 シュウの探索蝶が、駐車場スペースに舞う。
 今日は、店頭ライブイベントの日なのだ。
 ステージを設営したのは、昭仁と悠里である。舞台演劇に関わっている悠里は、組み立ての手順も確かで、手慣れたものであった。
 もっとも、設営前に珊瑚姫とともにアルバイトとして売り場応援に出たときは、ふたりしてドジっ娘スパイラルに陥ってしまったが。

「あら、このハスキーヴォイスって……」
「片山瑠意じゃない? リュウガナイトの。それに、ねえ、あのひと」
「きゃあ、来栖香介! ファンなのよ、わたし」
 ロックからバラードまで、幅の広い曲目と歌声が響き渡る。
 豪華な無料イベントとあって、ライブ会場は大入り満員だった。
 ヴォーカルに瑠意、キーボードに香介という有名どころもさることながら、ヴァイオリンで加わった須美、ベースのブライム・デューン、ドラムスは河野水漣、フルートに古森凛というそうそうたる顔ぶれである。
「あまり、緊張するな」
 最近は海賊団の面々から、天然とかボケとか、いやそれは詐欺っぽいとか言われ始めたブライムだが、今日はきちんとバンドの土台を支えている。
「はい」
 ブライムに声を掛けられ、皆の足を引っ張らないようにと最初は緊張していた須美も、やがてはノリの良い演奏を始めた。ちなみに須美お嬢様、今日はロック風衣装である。
 そして水漣は、演奏のかたわら、先ほど店内で買った胡瓜の漬物をばりばり食べていた。……マイペースだ。
 ノリに合わせて、悠里もタンバリンで加わっている。
(楽しそうだな)
 今日はおもに瑠意と香介を見るため、観客に混ざっていた葛城詩人は、愛用のエレキギターを手に、飛び入り参加を決意した。
 詩人の演奏は、コードだけを教えてもらい、後は自由な即興をおこなうやりかただ。
 自由闊達、天衣無縫。堂に入ったその姿は、流石、ロックギタリストである。
 他のメンバーの演奏力を信頼しているためか、実に気持ちよさそうな、のびのびとした演奏が続いた。
 
 ふわり。
 観客席から、バスケットボール大の水球が浮かび、ステージに移動する。
 水球がバスタブ状になったとたん、水の中にいた魚は、美しい人魚に変わった。
 彼女もまた、飛び入り参加者だった。メインボーカルにそっと寄り添うような声量で、蒼き歌姫・藍玉は、歌声を響かせた。

  ★ ★ ★

「まるぎんのCMにうっかり見切れてしまったよ。ほんのちょっとしか映ってないから、ギャラももらえなくてねー」
 店頭に臨時設置したテレビモニタの中で笑っているのは、映画スター、ギリアム・フーパーである。
 彼は、悟がCMを撮っていたとき、偶然にも、家族総出でまるぎんに買い物に来ていたのだ。
 この映像は、まるぎんCMが流れ始めてから、次回出演作のインタビューを受けたときのものである。
「あのスーパーは妻がひいきにしてて。コロッケっていうスナックがうまいんだ」
 ギリアムの近況報告は、願ってもない広報となったのだった。

 そしてコジローも、
(北京オリンピックの出場決めたから、スーパーまるぎんを全世界に宣伝するっス!)
 とばかりに、テレビ局のインタビューに答えていた。
 しかもそのとき、コジローは、まるぎんのロゴ入りブーメランパンツを履いていたのである!
「ここのカニクリームコロッケを食べると、金メダル取れます!」
 この決め台詞は狙い通りに全世界に流れ、大評判を呼んだ。

  ★ ★ ★

 ギターやピアノの即興セッションが聞こえてくる。良く通る瑠意の歌声が響く。
 ステージは佳境に入ったようだ。
 各チームは出払っていて、がらんとした会議場には、店長とリオネ、ペス殿にまぁみぃむぅ、そしてリゲイルとクラスメイトPが残っていた。
「リオネさんにも、お礼を言わなければ」
「そうだよね。ありがとう、リオネちゃん」
 店長とクラスメイトPの言葉に、リオネは首を横に振る。
「ううん、リオネ、なにもしてない。ペスちゃんとお話しにきただけだったから」
 涙ぐむリオネの目元に、リゲイルが膝をかがめてハンカチを当てる。
「あんまり泣いたらだめだよ、リオネちゃん。泣いてばかりじゃ前が見えないもの」 
 わん……、と、小さく鳴いて、ペス殿はその様子を見つめる。
 リゲイルは、グレイハウンドをぎゅっと抱きしめた。
「ペスちゃんも……。漆くん、もういないんだよ。遠くに行っちゃったの」
 くぅん、と、ペス殿はうなだれたが、しかしすぐに首を上げる。
 
 わん。うわん、わんっ!
 そんなことわかってるけど、待つのはあたしの勝手だもん。
 
  ★ ★ ★

「お好きなだけどうぞ、揚げたてですよ」
 お総菜コーナーでは、今日だけの出欠無料サービスとして、カニクリームコロッケが振る舞われていた。
 売り場を見学していたリゲイルは足を止め、店員の顔に目を見張る。
 まるぎんのロゴマーク入りエプロンをつけてはいるが、しかし彼はベイサイドホテルの……。
「本田さん……?」
 しーっ、支配人には内緒ですよ。僕は高校生アルバイトなんですから、と、流星は唇に人差し指をあてる。
「わかりました」
 くすっと笑って、リゲイルも呼び込みをする。
「皆さーん。カニクリームコロッケですよー!」

「これは旨い!」
 道満は全力でコロッケを食べていた。
 そっと、ペス殿が忍び寄る。

(お館さま、カニコロもう16個めでござる)
(お頭のようなヤングならともかく、食べ過ぎでござるよ)
 物言わぬ部下たちが、ジェスチャーで会話を始める。
(あああ、17個目をペス殿が狙っているでござる。……あ)
(っという間にゲットして走り去ったでござる。何という忍者顔負けの身のこなしっ)
(お館さま、追いつけないでござる。胃もたれでござるな)

  ★ ★ ★

 そして、数日が過ぎ。
 香介の編曲したBGMが流れる中――

 ――午前10時35分。
 虎視眈々と、ペス殿は待つ。

 そろそろ、道満がまるぎんから出てくる時間だ。
 戦利品の、カニクリームコロッケを抱えて。

クリエイターコメント★☆★☆★ 協力者名簿 ★☆★☆★

【コンサルティング・経営分析・再生支援】
 柊木芳隆/レオニード・ミハイロフ(兼スポンサー)/浅間縁/リカ・ヴォリンスカヤ/真山壱/流鏑馬明日/ルイス・キリング/真船恭一/りんはお/式純也/シュウ・アルガ

【市場調査・新規仕入先開拓】
 太助/神龍命/桑島平/赤城竜/レオ・ガレジスタ(兼備品・什器類メンテナンス)/スルト・レイゼン/旋風の清左

【イベントスポンサー】
 リゲイル・ジブリール

【各種マネージメント】
 萩堂天祢

【精神的支援(対店長)】
 蘆屋道満/ルウ/レモン/ジュテーム・ローズ/狼牙/リャナ /ブラックウッドの使い魔(兼チラシ配布)/綾賀城洸/アレグラ/ルア/晦/兎田樹/ベアトリクス・ルヴェンガルド/藤代陽子/続歌沙音(兼売り場支援)

【精神的支援(対奥さん)】
 ベルヴァルド/王様/エンリオウ・イーブンシェン/シキ・トーダ/槌谷悟郎

【売り場支援】
 ニーチェ/吾妻宗主/モミジ/アル/津田俊介/鹿瀬蔵人(兼署名運動)

【警備支援】
 本気☆狩る仮面あーる/本気☆狩る仮面るいーす

【清掃支援】
 カロン

【広報活動】
 小日向悟/エディ・クラーク(CM演出)/ギリアム・フーパー/長谷川コジロー

【署名運動】
 クラスメイトP

【集客イベント活動】
 ★出張海賊喫茶
  ヴィディス バフィラン/アゼル/ノルン・グラス/ハンナ/セエレ(兼店内改装支援)
★店頭ライブ
  来栖香介:キーボード(兼音楽支援全般)/古森凛:フルート(兼売り場支援)/朝霞須美:ヴァイオリン/岸昭仁:ギター/葛城詩人:ギター/ブライム・デューン:ベース/河野水漣:ドラムス/悠里:タンバリン(兼会場設営)/片山瑠意:ボーカル/藍玉:女性ボーカル・コーラス
 ★異色飛び入りライブ
  クロノ(兼売り場支援)/ノリン提督/ケト

★☆★☆★ ★☆★☆★

お忙しい皆々様を、まるぎん内の会議場に思いの外長時間お引き留めいたしまして、面目次第もございません。いろいろ考えました結果、基本的にボツなしでお届けいたします(多少、調整させていただいております)。
中には、プレイングにない台詞や行動を、おそらくこのかたならやってくださるだろうという判断のもと、追加させていただいたケースも何人かいらっしゃいます。特に誰とは申しませんが、たとえばルイスさんとかルイスさんとかルイスさんとか。

そして萩堂マネージャー、バンド発案者の昭仁さま、まぁみぃむぅやペス殿や店長やドクターや珊瑚姫や源内をバンド企画や店内放送のボーカル(笑)にお誘いくださいましてありがとうございました。
文字数の関係で描写しておりませぬが、たぶん、コンサル専任のドクター以外は何らかのかたちで加わったのではと思われます。

ともあれ、皆々様には大変お疲れ様でした。
おかげさまでまるぎんは持ち直し、現在も通常営業を続けています。
なお、ポイントカードと割引券に使用する、きみょ可愛いマスコットのデザイン公募は今月末まで受け付けておりますので、ふるってご参加下さいまし(注:嘘ですよ〜)。

ご協力頂いた皆様に、心からの愛を込めて。また銀幕市のどこかで、お会いいたしましょう。
公開日時2008-06-22(日) 11:30
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