オープニング

 世界司書ヴァン・A・ルルーが呼び出されて館長室に入ると、そこには、困惑顔のアリッサと、思案顔のレディ・カリスが彼を待っていた。

「『鉄仮面の囚人』と呼ばれている人物については?」
 開口一番、レディ・カリスから発せられた問いに、ルルーは肩をすくめる。一般に知られている以上の情報を、彼も持ち合わせていなかったからだ。
 いわく――
 ホワイトタワーの奥にひそやかに囚われていた、鉄仮面で顔を隠された男。
 「エドガー」という仮の名を与えられ、ごく限られたロストナンバーとだけ交流を持ってきたかの人物は、マキシマムトレインウォーの戦火の中で命を落としたとされていた。
「私が甘かったのです」
 レディ・カリスは言った。
「あの方がそう簡単に死ぬはずなどありませんでした」
 事実、男は戦災を生き延び、今もターミナルに潜んでいるのだという。
「それが、いくつかの『鉄仮面事件』の原因だというの」
 アリッサは告げた。
 何者かによって「鉄仮面の殺人者」となったロストナンバーが、ターミナルに暮らすロストメモリーを殺そうとした事件が相次いでいる。その事件の黒幕こそ、かの人物であるというのだ。

「どうせ知られることだから、言っておきますけれど」
 カリスは言った。
「あの方の本当の名前は、ルイス・エルトダウンと言います。エドマンドの父君です。あの方を野放しにしておくことは、病を放置するに等しいこと。あの方の闇は、いずれターミナルすべてを侵すことでしょう。……ホワイトタワーは、かつては、『赤の城』と対をなし『白の城』と呼ばれるエルトダウン家の所領でした。それが城ごとチェンバーに封印されたのは、あの方を閉じ込めるためだったのです。そう、ホワイトタワーにあの方が収監されていたのではない、ホワイトタワーはあの方を収監するために生まれました。それほどの邪悪なのです」
 カリスの美しいおもては静かであったが、ルルーははっきりと感じ取った。
 『ファミリー』たちは、あの人物を恐れているのだ、と――。

「というわけで、捜査を行いたいと思うの。ルルーは、まず、みんなから広く情報を集めてくれない?」
「かしこまりました」
 アリッサの依頼に、クマ司書は頷くのだった。


ご案内

かつてホワイトタワーに収監されていた謎の貴人「鉄仮面の囚人」。マキシマム・トレインウォーに巻き込まれて死亡したとされていましたが、実はひそかに生き延び、ターミナルで暗躍していたことがわかりました。

行方の掴めていない囚人をこのまま野放しにしておくと、ターミナルに害悪をもたらすおそれがあります。世界図書館はその捜索を行うことを決定しました。

■参考情報


■選択肢
このイベントでは、以下のいずれかのアクションをとることができます。

【A】『鉄仮面』捜索に関する提案を行う
『鉄仮面の囚人』の捜索に関して、捜索場所や捜索方法の提案を行います。

【B】『鉄仮面』について思うところを述べる
『鉄仮面の囚人』について、あなたが思うことをお聞かせ下さい。

■参加方法
プレイング受付は終了しました。

これまでの経緯

■ホワイトタワーの囚人
ホワイトタワーの奥にひそやかに囚われている、鉄仮面で顔を隠された男がいる――彼はなんらかの罪を犯したが、身分の高さゆえにただただ収監されるのみで百年以上を無為に過ごす人物である……。そんな噂を聞きつけ、数名のロストナンバーたちが彼と交流を持ち始めたのが事の始まりでした。当初、レディ・カリスは囚人から、当時懸案となっていた『虹の妖精郷』にまつわる情報などを引き出せるのではと期待して面会を許可しました。ですがその後、彼に魅了されたかのごとく、ロストナンバーたちは許可を得ずに面会を続けます。


■戦火の偽装死
ナラゴニアの0世界侵攻により戦火に包まれたターミナル。それに先立つホワイトタワー崩壊のおり、囚人はロストナンバーに救出されたものの、戦火に巻き込まれて命を落としたとされてきました。『告解室』に遺体が安置され、その後、埋葬されましたが、それは本物の遺体ではありませんでした。


■鉄仮面の亡霊
世間的には囚人は死んだと思われている一方、ターミナルに「鉄仮面の殺人者」が出現し始めます。自身の体内から「凶器」を取り出し、「ロストメモリーへの殺意」をあらわにするかれらは、「鉄仮面の男に会った」と口々に語ります。


■暗躍の鉄仮面
鉄仮面の囚人は生存し、ターミナルに潜伏し続けていました。おのれの影を分身として、他者の心に眠る悪意を目覚めさせる能力を用い、「鉄仮面の殺人者」を次々に作り出していたのです。彼は今も、0世界のどこかにいるはずです。深い悪意を、その仮面の奥に漲らせながら。


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螺旋特急ロストレイル

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