年越し特別便2011→2012

オープニング

『２番線より、ヴォロス行き特別便が発車します。ご乗車の方はお急ぎ下さい――』

「たいへん、遅れちゃう！」
　アリッサがホームを駆ける。
　特別に増便されているこの時期、ロストレイルの運行ダイヤは過密をきわめる。たとえ館長であろうと正当な理由なく――たとえば、出発に手間取ったとか――みだりにその予定を変えることなどできようはずもない。
「お嬢様、失礼します」
「きゃ！」
　随行しているウィリアムが、アリッサを小脇に抱え上げた。
　片手でトランクを積み上げた台車を引き、もう片手でアリッサを抱えながら、巨漢の執事は大きなストライドでターミナル駅を走った。
　間一髪、一等車両に飛び込み、荷物もすべて引き上げたまさにその瞬間、列車の扉が閉じる。
「間に合った……ありがとう、ウィリアム」
「私的なご旅行とはいえ、館長がお乗り遅れになるようなことがあっては外聞というものもございますので」
「遅れそうになったのはレディ・カリスにお小言を言われていたからよ。いちばん外聞にこだわりそうなのにね」
　アリッサは息をつくと、服装を整え、動き出した車両の窓ガラスで帽子の位置を直した。
「まあ、いいわ。ヴォロスに行くのは久しぶり」

　一台、また一台とロストレイルが発車していく。

　壱番世界の暦が改まるこの時期だけ運行される「年越し特別便」が、今年もまた、さまざまな場所への旅へと、ロストナンバーたちを運んでいるのだった。

ご案内

『年越し特別便』……それは壱番世界の暦で年が変わる前後の期間だけ運行される、ロストメモリーも乗ることのできる特別列車です。

この期間だけは、世界司書も含めたターミナルの住民たちが自由に世界群を旅行する特別な日々となります。

■参考情報
→「年越し特別便2009→2010」

2012年の「年越し特別便」は特別企画「イラスト付きＳＳ（ショートストーリー）」として行われました。

「イラスト付きＳＳ」とはライターとイラストレーターによるコラボレート作品です。参加者のプレイングにもとづいて、ソロシナリオ相当のごく短いノベルと、参加者全員が描かれたピンナップが作成されます。ピンナップは納品時に、各ページの看板画像としてレイアウトされます。「イラスト付きＳＳ」は便宜上、シナリオとして扱われていますが、それぞれ、特定の担当ライターと、担当イラストレーターのペアになっています。

イベント掲示板

イベント掲示板も運営されました。異世界からの新年メッセージをみてみましょう！

→みんなの年賀状2012